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▽ リョウカタオモイ

「え、と…近藤局長、ですよね?あれ?どうしてここに…」
「※%#&*@§★ッ!!」
「ええっ!?ちょ、こ、近藤さんっ!?」

不思議そうな顔のナマエさんと阿呆面の俺。一瞬だけ大きなその目と見つめ合ってすぐ、気が付いたら俺は何故か自分自身が踏んづけて真っ二つに折れた木の枝を掴んで脱兎の如く逃げ出していた。意味不明な叫び声を上げながら。…ああ、ダメだ終わったもう消えたい。



「なんなの…?」

ていうか、なんでこんなところに近藤さんが?言葉にならない声を上げながら走り去っていく彼の背中を呆然と見やる。イマイチ頭が働かない。

えーと、あれ?だってチケット私にくれたのにどうやって…もしかして当日券買ったのかな?とか、どうでもいいことから。もしかして…あの子と来たのかも、だなんて少し頭を掠めただけでめちゃくちゃ落ち込むことまで。考え出したらキリがないことばかりだけれど…それよりも、

「あっ!?ちょっと近藤さっ…どわっ!」

何も逃げなくてもいいじゃない!?

驚きすぎたせいかいつの間にか喉はカラカラで。咄嗟に出た上擦った声は慌てすぎてよろめいたせいか何とも可愛くない悲鳴に変わった。見れば随分遠くに行ってしまったせいで小さく見えるあの背中。待って、と口をついて出た声をその場に置き去りにして後を追い掛け走り出す。

「お願い!待って!近藤さん!近藤さんったら!!…聞こえてるんでしょう!?」

周りの目なんて気にせずに上げた大きな声は貴方に届いているはず。

「っ無視しなくても!いいじゃないですか…っ!」

けれど決して振り向いてはくれない。時折後ろを気にする素振りを見せる程度で。

ああ、このままだと置いてかれちゃう。

「ちょ、近藤さっ…」

待って、と必死に伸ばした手も虚しく宙を掴むばかりで距離だけがどんどんどんどん開いていく。走り馴れていない太ももがびりびりと悲鳴を上げる。このまま走り続けていたら、もしかしたらその内呼吸困難を起こしてしまうかも。そう思ってしまうくらいには息も絶え絶えで身体中が痺れて、今にも足を止めてしまいたいくらい苦しくて。

…でも、この足を止める気はない。いくら苦しくても、追い付けっこなくっても。それでも私は、

「…っす、き、なの」

貴方のことが…近藤さんが、好きなんですっ!!

鼓膜を揺らす自分の大声に自身が一番ビックリした。人間追い詰められると思ってもみない行動に出るらしい。こんなタイミングで、こんなところで、言うつもりなんて無かったのに。数秒前の自分の行動に少しばかり後悔していたらさっきまで私のことなんて見向きもせずに前を走っていた筈の近藤さんがいつの間にかその足を止めていて、

「え…なんで、え?ナマエさん、トシが好きなんじゃっ」

だなんて何だか今にも泣きそうな…自信のない顔をするから。そんな顔されたら、少しだけ、ほんの少しだけ…期待しちゃうじゃないですか。

ふらふらと、あちこちさ迷う目をただひたすら見つめて。

「…私が好きなのは、近藤さんです」

一歩、踏み出して。真っ赤な顔で立ち尽くす彼に近付いていく。

「ナマエさ、」

二人の間に確かにあった距離。だけどもう大丈夫。きっとあと一歩踏み出せば埋まるはずだから。

「真選組に女中として雇って頂いたあの日からずっと、近藤さんのことが好きでした」

江戸に出て来たばかりで、右も左も分からなかったあの頃。職を探すものの、なかなか良い職場に出会えなくて。そんな時、偶然街で見掛けた女中募集の貼り紙。男らしいと言ってしまえば良いのか、正直綺麗な字とは言えないその貼り紙を見たとアポなしで突然屯所に訪れた私を何とも温かい笑顔で迎えてくれた近藤さん。

これからよろしくね、なんて手を差し出してくれたこと。一緒に真選組を支えていこうと声を掛けてくれたこと。都会に揉まれて廃れていた私の心があの一瞬で救われたなんてこと、貴方は知らないでしょうけど。

あの時から、ずっと。私の中には近藤さん、貴方がいるから。

「そ、んな…昔から?」
「ええ」
「だって…え?俺、少し前までナマエさんの前でお妙さんの話ばかりしてたし、」
「…まあ正直辛くなかったかって言われたら嘘になりますけど」
「し、知ってると思うけど俺かなりのストーカーで…」
「はい。朝方何度もお迎えに上がりましたよね」
「そ、それなのにどうして俺なの!?ナマエさんの前では最低な男だったでしょ俺!?警察ともあろう男がストーカーするわ朝帰りだわ…それに自分で言うのもアレだけど顔はゴリラだし、ケツ毛はボーボーだし枕からは既に何とも言えない加齢臭がするしっ」
「近藤さん」
「それに俺…っ俺、随分自分勝手なことばっかしちゃったしさ」

そう言って自嘲気味に笑った近藤さん。そんな彼に何て声を掛けたらいいのか分からなかった。けれど、あまりに苦しそうに笑うもんだから。そっとその大きな手のひらを包み込んで笑ってみせる。

そしたら少しだけ、それでも困ったように微笑んでくれて。

「…俺、自分に自信がなかったんだ。敵いっこないって勝手に決め付けて、遠ざけて。でも結局諦めきれなくて。こんなとこまでついてきちゃって…女々しいってことは分かってるんだけど」
「…え、あの?」

この人は、一体なにを言うつもりなんだろう?包み込んだ両手から微かに震えが伝わってくる。そっと顔を上げると今にも泣きそうな、そんな表情で私を見下ろす近藤さんと目が合って。

「だけど…あのさ、」

それから、ぎゅっと大きな手に包み返された自分の両手。一瞬そっちに気が取られて彼から目を離していた隙に、

「本当は俺、トシにも…誰にもっ!ナマエさんのこと渡したくないっ!」

ボロボロと大粒の涙を零してしゃくりあげながら、俺もっ!ナマエさんが好きですっ!なんて。泣いてるのに嬉しそうに笑うから。身体の底から沸き上がるような愛しさを自分よりも一回りも大きいその体を抱きしめることで消火して。

「私もっ!」

数年越しの片想いが、気付かない内に実っていた。そんなリョウカタオモイ。

end

(…あのォ、別にいいんだけどォ…俺のこと忘れてない?)

―――――――――――――――――

まりも様ァァァ!!大ッッ変遅くなり誠に申し訳ありませんんんん…!!
何ヵ月待たす!?って感じですよねホント(TT)
しかも出来上がりがコレっていうね…久々に書いたせいかイマイチ掴めてない部分ばかりですが、愛だけは←篭っております!!!
こんなところでアレなんですが、言ノ葉二周年のお祝いもちゃんと覚えてますからね!!?
それこそホント何ヵ月経った?って話なんですがちゃんと!ちゃんと贈りますんで〜っ!!
もう少々お待ちいただけたら嬉しいです(;;)
これからも仲良くして下さい〜!よろしくお願いします♪

2015/9/13 fuwafuwa Umi

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