こうして天使は翼を捨てた


――らしくないことをした、理由はたったひとつ。

  石になったタヌキ先輩を見つめる、好きな女が泣きそうだったから。
 

「ねえ、ナマエ」


最後まで一人残り、石になったクラウンと見つめ合うナマエの名を呼ぶと、くしゃくしゃに歪んだ顔で、寂しがりの少女が振り向いた。なに、と震える声を隠せていないくせに、無理矢理に笑顔を作って。痛々しいその笑みは、見るに耐えない。――そんな顔をさせたくないと、この身を形成する全てが叫んでいる。
口に出せないその感情を、どうすれば処理できるのか。リソルはよくわかっていた。ナマエがどのような人生を送ってきたのか、故にどれほどこの地で、この環境で、得た仲間を大切に想っているか。リソルは誰よりも知っているつもりだ。


「ひとつ、聞いておきたいんだけど」


ナマエの答えは分かっている。

―――愚問だと知りながらもしかし、リソルはその問いを投げた。


20170509