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神殿を進んでいく中で、私達のグループは既に合流していたアクトやテリー、ディルク様達のグループと合流した。なんだかマーニャがテリーを獲物を見るような目で見ている気がしたけど、ディルク様を見る目の方がきらきらしていて、なんだかマーニャという人間が少しばかり分かった気がした。それと少し言葉を交わしたけど、私はマーニャがすごく好きみたいだ。神殿の入口でも見たとおりマーニャの踊りは凄く綺麗で、言葉そのままそれを伝えてみると得意げに、嬉しそうに笑った彼女からの熱い抱擁を受けたのは余談。押し付けられた胸の柔らかさに、思わず頬が熱くなると何故だかマーニャに張り合うようにゼシカからも抱きしめられて、再び熱でどうにかなりそうになったのも余談。……男衆の目線が突き刺さっていたのも余談だ。多分。テリーだけは呆れたように私を見ていたわけだけど。

そのフロアの魔物を一掃したところで、一旦体制を立て直すために私達はバトシエに戻った。アクトは気持ちが急いているだろうに、と思ったけれど彼は意外に冷静で、試練を受けるためには自分が万全でなければならないと言って、新しく武器屋で剣を購入していた。その目は遠く離れた場所から見ても真剣だというのが伝わってきて、アクトが幼馴染だという存在を本当に大事に思っているのだということを実感させた。こういう時、レックもきちんと冷静に状況を判断出来るタイプだった。ハッサンがいつも突っ走っていたから、逆にそのハッサンを見てレックは冷静になっていたのかもしれないけど。


「ナマエってば、アクトのことばかり見てるのね」
「そうかな?……私の仕えてる、王宮の王子様にちょっと似てるからかも。アクトと勝負したら……ううん、分かんないかも」
「ナマエの国の王子様は強いのね!」
「世界を救った勇者様でもあるの。あ、でもアリーナはハッサンと気が合いそう…すごく強い武闘家なんだよ」
「すごく強い武闘家!」
「ナマエさん、おやめください!姫様がまた他の男…いえ悪い癖を!」


きらきらと目を輝かせるアリーナに、焦った表情を見せるクリフトが面白くて思わず笑ってしまう。二人のやり取りは微笑ましくて、血気盛んなハッサンと物腰柔らかくそれを止めるミレーユの姿と、ミレーユに加勢する冷静なチャモロの姿なんかを思い出させた。

レック達と旅をしたのは、最初から最後までじゃない。最初は一時的な加入のつもりだったし、一吟遊詩人には世界を救うなんて使命を受けられる資格はなかった。けれど、それでもみんなと過ごした時間は私の宝になっているし、私の夢はレック達との出会いで現実に叶えることが出来た。あの旅で得たものは、全て私の宝物だ。


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「ナマエってば、アクトのことばかり見てるのね」


アリーナの声が聞こえてきて、同時に視界の隅でテリーが足を止めたのを見た。「どうしたんでがす、ゼシ」「おっさんちょっと黙ってて」ヤンガスの口に手を回し、物陰に隠れてテリーの様子を伺った。不機嫌なオーラを隠さんばかりのテリーに、思わず口元が緩む。


「ゼシカ、いきなり何を…」
「ねえおっさん、今日はナマエと一緒に行動してたわよね?」
「それがどうかしたんでがすか?」
「ナマエって、テリーの事どう思ってるのかしら」
「……ゼシカ」
「何よ」
「楽しそうでがすね」
「そうかしら?」


楽しくてたまらないのを隠して、ヤンガスに微笑むと面倒なのはごめんでがすよとヤンガスはそそくさと逃げていく。何よ面白くない。テリーみたいなタイプが好きな子に素直になれないってすっごく面白いと思うんだけど……「あ、そうだ」こういった話題に食いつきそうな人が、さっき仲間になったばかりじゃない。






(2015/03/05)