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建物の中をひととおり探索し、図書室なんてものが無いのを確認した後、私は玄関から外へ出た。……地平線の向こうに見えるのは、紛れもなく海。目の届く範囲に大陸はなく、この島がどこにあるのかも分からない。

ぴょんぴょんと目の前を跳ねていったスライムを目で追いかけると、森へ入っていったのが見えた。なるほど森もあるんだ、この島…海もあるみたいだけど、スライムがああして生息しているってことは、そこまで強いモンスターはいないんだろうと思う。遊撃隊のメンバー、見た限りだとクロコダインさんはかなりのレベルだと思う。リザードマンにしては着込んでいる鎧はかなり傷んでいたし、何より他の、今まで見てきたリザードマンとは雰囲気が違う。チウはまあ、本人の強さ如何はともかく。後は彼だ、ヒム。

デスカイザーを容易く倒してしまえるなんて!オリハルコンの体は大抵の魔法を弾き返してしまうんだろう。対抗手段は同じオリハルコンの武具での攻撃のみ、もしくは特殊な魔法攻撃…どちらにせよ、限られた人間しか彼を傷つける術は持たない。魔王ランクの強さを持つんじゃないだろうか。魔物でなくても昨日のポップとマァム…二人もかなり強そうだった。強そうだったからこそ考えていることを隠さずそのまま口に出していたけど、逆に警戒されてしまったのかも。……とにかく!ここに居ても埒が開かないことは確かだ。


「船ってないのかなあ」


ルーラが使えるにしろ、この世界で私の知っている場所は今居るここしかないわけで。かと言って、デスカイザーに襲われたところまで飛ぶのも怖いし……あ、でもあのデスカイザーはヒムが倒したと言っていたっけ。なら大丈夫かな?リングの欠片が落ちていたりしたら、それを元にリングを修復出来たりとか。チウは昼前までに戻ればいいって言ってたし、その間自由にしていて良いって行った。島から出ちゃいけないなんて私は聞いてない。OK!いける!お昼前に帰ってくれば完璧!

即座に目を閉じて、頭の中にデスカイザーが居た場所のイメージを浮かべる。――襲い来る炎と、私を守った二匹の相棒の姿が浮かぶのを必死で堪えてイメージを捉えた。悪魔の目玉に吊るされて、私は燻製にされそうになったんだっけ…あ、やばい、吐きそう。


「……やめとこうかな、ってわけにもいかないか」


必死で口元を押さえて、ルーラを呟くと魔法力が体を取り巻く。――次の瞬間、目の前に現れたのは先程まで(その存在について)考えていたヒムの姿だった。彼は銀色の腕で巨大な丸太を抱えており、ああ資材を運ぶ途中なんだと認識した次の瞬間には私の体は洞窟の目の前に到着していた。うわあどうしよう、思いっきり見られてた…






(2015/02/03)