06


「あーっ!信助!遅いと思ったら名前ちゃんを…!」
「さっきそこで偶然会ったんだ。へへっ」
「ずるい!名前ちゃん、俺も!俺も手!」
「ごめん天馬君ちょっとよく分からな、うわあ!」


どん、と音が響いた気がした。どうしてだろう、私は確かに木枯らし荘の玄関の扉を開いた…んだけど。なんで空なんて見上げてるんだろう。あー、そうだ!両手を広げた天馬君がタックル仕掛けてきたんだ!私の上に乗ってる、茶色いふわふわしたこれ天馬君の髪か!…ああ、まあ無理だよねえ…西園君の小柄な体ならともかく、流石に天馬君の体は支えきれないよね。結構な勢いで打った後頭部が痛い。


「おいおい天馬君ってば!……名前ちゃん、大丈夫?」
「……だいじょばない」


差し出された手を遠慮なく掴むと、ぐい、と引き上げられる感覚があった。揺れたくせっ毛は狩屋君だ。ありがとう、と頭を押さえながら笑ってみせると哀れみの目で何故だか頷かれた。狩屋君、私好かれているのはいいことだと思う。「狩屋、抜けがけはずるいよ!」「これのどこが抜けがけなんだよ天馬君…」天馬君に呆れた声を上げながら、私の鞄を拾い上げた狩屋君がぱらぱらとホコリを払ってくれた。狩屋君にはぜひ彼のいいところを知っている可愛い女の子とピュアな恋愛をして欲しい。お姉さん心からそう思います。


「そうだ、名前ちゃん!今から暇?俺たちサッカーするんだけど」
「残念だったね天馬、名前ちゃんは今からバイトなんだ」
「なんで信助君が…いやまあ、ならいいんだけどさ」
「そっか。名前ちゃんバイトなんだ…」


しゅんしゅんしゅん、って同じタイミングで眉尻下げるの、申し訳なくなるからやめてほしい。おかしいなあ、結構な頻度で天馬君達がサッカーしてるの観戦してるはずだしそこまでの貴重性はなさそうなのに。「ご、ごめんね三人とも。次は予定さえなければ付き合うから」「ほんと!?」「うん!本当!」ぱっと顔を上げた天馬君の顔にはきらきらきら!と見えないはずの星が光っている気がして、即座に首を縦にこくこくと振っていた。好かれているのは嬉しいけど、本当に私でいいの天馬君…。


「じゃあ名前ちゃん、来週の日曜日は空いてる?」
「来週の月曜日…?」
「すっごく特別な試合があるんだ。俺たちの応援に来てよ!」


天馬君のきらきらスマイルは多分、G5ぐらい威力があると思う。気がついたら首が縦に動いていたから本当にこの子は末恐ろしい。やったー!って天馬君と西園君はハイタッチしてるけど、特別な試合ってなんなんだろう?


四日目:夕方



(2014/12/19)

一年生というか基本的に懐かれています。お姉ちゃんが欲しいです。
メインが出て来ない四日目。三日目は飛びましたが今後もこんな感じで飛んだりします。