ガラス張りの渡り廊下



図書室でリュゲルと目が合った瞬間、驚くほどに肩が跳ねた。

逃げるように図書室から飛び出した後に、なんとなくだけどもガンダレスの怒りの原因が分かった気がした。もしかして、もしかして――いくつかの点を結んで線を引いてみる。納得のいく道が出来る。ああ、もしかしたら、もしかしたら。

ガンダレスはリュゲルを慕っている。憧れている。普通の兄弟とは多分、少し違う。

私はずっと近くにいた兄弟が二人だったから、感覚が少し麻痺しているのかもしれない。それでも二人が少しおかしい、と思うことは多々あった。特にガンダレスはリュゲルの事となるとかなり敏感になるのだ。兄と自分の敵にガンダレスは一切容赦しない。私はリュゲルの敵にはならないかもしれないが、ガンダレスの敵になる可能性はあった。だってガンダレスは兄が第一、世界のほぼ全て。


―――私のことなんて、きっと兄のオマケ程度だったのだ。


そう考えると悔しさと悲しさと織り交じったような気持ちになるけれど、でもそれは一番納得の出来る考えだった。きっかけは多分、あのリュゲルの私への告白だ。見ていたのかもしれない。聞いたのかもしれない。結論としてガンダレスは兄を苦しめたとして、私を敵だと認証したのだろう。


「………どうすればいいんだろ」
「何がだ?」
「っあ、りゅ、リュゲル!?」


抱えていた鞄が地面に落ちた。焦っていたからかきちんと閉じていなかったせいで、鞄の中身がばらばらと散った。周りを見渡す。――ガンダレスはいない。


「本を読んでる。――探してるのか?」
「そういうわけじゃない、けど」


誰の事か、なんて言わなくてもいい。気がついた時にはリュゲルに腕を引かれていた。「最近おかしいぞ」「……うん」知っている。おかしいのだ。ガンダレスに近寄れなくて、結果いつも二人が一緒だからリュゲルにも近づけなくなっていた。「俺じゃ頼りないのか?」「違う、違うよ!そんなんじゃ…!」「あのなあ、ナマエ」先を歩いていたリュゲルが振り返る。――あの時と同じ、真っ直ぐな目。


「ナマエが好きだ。だから、だから……頼れよ」





(2014/01/17)