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「……あれ?なんでみんな集まってるの」
「お、苗字じゃねーか。やっと戻ってきたな」
「まったく…どこをほっつき歩いていたんですか?」


こっちは大変だったんですよ、と真名部がじろりと私を睨む。まあまあ、と真名部を宥めてくれたのは鉄角で、ごくろーさんと肩に手を置かれた。なんという兄貴。今のでだいぶ精神的なものが救われた気がする。練習はハードだし大和には逆らえないし、貴志部君は癒しだけれどもレジスタンスジャパンのメンバーは基本的に私に味方してくれないからな!?

例えば私が大和に絡まれて困ったとき。ガキ大将の如く王様の化身ひっさげて、私が逆らえないのを知っててバカにしてくる大和(逆らった場合過去の恥ずかしい思い出が暴露される)、基本的に大和サイドの護巻君、その気も無くなってしまったくせに私をからかって遊ぶ南沢さん、フォローはしてくれるけれども大抵最期には丸め込まれてしまう白竜君。我関せずで遠くからまたやってるな、なんて言ってくる真狩君、雪村君、真帆路さん。そっと目を逸らしてくる黒裂君は一番傷つくから本当やめて欲しい。喜多君は大抵貴志部君と揃って首をかしげているからまあ良しとしても、浪川君なんか悪ノリを始めて千宮路が嫌なら俺様の部下になれ!なんて良い笑顔で言ってくるからどう返答していいものか分からなくなるのだ。あっ思い出したら涙出てきた…笑いながら煽ってくる明王の兄さんからは悪意しか感じないしもうやだ……


「だから名前さん、九坂が………ああ、これは駄目だ。手が付けられない」
「剣城でも駄目ならそうだな、空野は居ないのか?野崎は同い年だから森村か?」
「え、ええっ?うちですか…!?」
「森村、少し我慢してくれ」
「あ、ちょっ…!」


もふん。


「………」
「……あ、あの、苗字…さん…?」
「………天使二号」
「へ?」
「好葉ちゃんマイヒーリングスポット…」


抱きしめると顎のあたりにふわふわとした感触。戸惑ったような声は小さいのでこの際無視することを許してください。私には、私には癒しが足りないんだ!


**


「九坂が警察に捕まった?」
「そうらしいよ。だから少し気になって真名部君と調べていたんだ」
「警察沙汰って、出場!…出来なくなるわけではなさそうだけど」
「?何か言いましたか」
「いや、はは…天馬君は九坂を迎えに行ったんだよね」


そうです、と頷く真名部に話を逸らせたことを確認。いやあ、これが本当の世界大会なら警察沙汰になった時点でアウトだよ…なんて恐ろしい。「九坂は一体何をしたの?」「…暴力らしい」まったく何を考えているんだ、と神童が小さく(不安と苛立ちを確かに顔に浮かべて)呟いた。それには本当に同意する。


「んー、でもなんで暴力?」
「彼はかなり有名な不良だったようで」
「不良?あの髪型変だったり時々街にいたりする人たち?」
「……少し気になったんですけど苗字さん、あなたは普段何を考えて生活しているんですか」
「サッカーと女の子とサッカーと、」
「苗字さんって絶対に成績悪い人ですよね」
「そ、そんなことないよ!?」


確かに時々危ないときはあるけど!と必死に否定したけれど真名部はまったく信じてくれないらしかった。まあ、…成績が極めて良いわけじゃないけどバカってわけでもないから!筋道をきちんと立てればちゃんと計算だって出来るから!「…って剣城?」「いや、ちょっと…名前さんが勉強してる姿を想像出来なくて」真顔でそんなことを言った剣城の声に僕も俺も私も、と賛同する声がちらほらと。えっ何これ酷くない?



マイヒーリングスポット



(2014/03/10)