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レジスタンスジャパンでの練習の日々はそう多くは語る必要はないだろう。…無いはずだ。無いと誰かに言って欲しい。正直なところ、胃に穴が空きそうなぐらいに肩身の狭い思いしかしていない。

ボールを蹴れるのはそりゃ楽しいのだけど…楽しいのだけど!「ほらグズってんな。もうちょい気張れ」さっさとしろよ、と背中を叩いてくる明王の兄さんもとい不動監督は私にだけやけにスパルタ度が増している気がする。雑用の押し付けだとか練習の合間のサポートメントだとか!マネージャーという名の癒し成分は無いのかと非常に問いただしたい。一番嫌がらせに感じるのはコレだ。


「ほーら、さっさと打って来いよ!」
「……ううう…!」
「なんだどーした、ビビってんのか?」
「そんなわけないでしょうが!」
「ああ?」
「…う、ううっ」


――マンツーマンでの私と大和の練習、多すぎやしません!?

いやあお前にも苦手な奴って居るもんだなあ、とニヤニヤしながら私と大和をゴール前にそれぞれ立たせた時の兄さんの顔は本当に楽しそうだった。水筒の中身をトマトジュースにしてやろうかと思ったが、いざ…苦手な相手を目の前にするとなんだかシュートが止められそうな気がして怖気付いてしまう。ええ、言葉通りですとも。ビビっていますとも。それが何か!あの時さんざんぼろっくそに大和君にバカにされた心の傷のおかげで必死に努力しましたよ!でもこんなところで再会するなんて思わないじゃん!?しかもあの決闘(小さい時に庭でやったPK勝負)の末に書かされた一生の恥をこんなところで…


「剣城が恋しい…雷門が恋しい…ジャパンが恋しい…」
「おいブツブツうるっせえぞ名前のくせに」
「うるさい!」
「…は?」
「………う、うるさくない」


昨日も今日もこんな調子で、更に昨日なんか延々とそれをメンバー全員に見られ…私の実力を見せるのだと、こうしてチームのキーパーである大和にシュートを打てと言っていたけど正直ゴール前に大和が居たらメンタル的な意味でシュートが出来る気がしない。ガキ大将に逆らえないひ弱な少年の気持ち今なら分かる気がします…染み付いた習性というのはなかなか上書き出来ないらしい。どれだけこき使われてたんだ幼き私よ…まさか南沢さんより私の胃を痛めつけてくる相手が用意されているなんて思いもしなかった。本当なら休みを利用してさくらちゃんや好葉ちゃんとショッピングをしたり葵ちゃんとのんびりしたり剣城と遊びに行けたり出来たかもしれないのに!


「ああああもう!成長した私のシュート止められるもんなら止めてみろ!」
「お、やっと打つのか…丁度飽きてきたところだったしな」


どんだけ成長したのか見てやるよ!と構えた大和を確認したので、もうやけっぱちになって、手持ちで一番強力な必殺技をかましてやった。流石の威力というべきか、呆けた大和の横をすり抜けてボールがゴールネットに突き刺さる。「よーし合格だ!向こうの練習に入っていいぜ」まったく遅ぇんだよ、と明王の兄さんがぶつぶつと呆れたように言うけれども私としてはキーパーが大和でなければもう少し早く練習加入を決められていたような気がする。

……まあ、キーパーによってシュートの威力を左右される選手なんて私が監督だったら入れないだろうけれども。


**


「苗字さん、さっきのシュートは凄かったね」


先程の情けない姿からの下克上を見ていたのだろう、黒裂君が声を掛けてきてくれた。「え、ほんと?」思わず口元がニヤついていく。さっきの必殺技にはそれなりに自信があったので褒められるととても嬉しい。そういえば帰ってきて初めて使った気がする。なまってたような気がするからもう少しきちんと練習しよう。

「でも黒裂君の爆熱ストームも凄かったね!」「ふふ、ありがとう」少し気恥ずかしそうにする彼は謙遜しなくていいと思う。化身だって格好良い。そういえばまだ黒裂君は豪炎寺さんに教えを受けていたと聞くし、なにやら通じるものもあって嬉しくなってくる。「俺も負けていられないな」雪村君がこちらに不敵な笑顔を見せつけてきた。雪村君は確か…吹雪さんを師事しているんだっけ。ちらりと視線をベンチ側に向けると貴志部君がシューズの紐を結び直していた。木戸川の監督はアフロディさんで……うわあ、考えてみれば凄い豪華なメンバーだよねレジスタンスジャパン。真帆路さんも幻影のキャプテンだって聞いてるし、浪川君も海王のキャプテンらしいし…喜多君も天河原のキャプテンだ。


「……俺が手加減してやっただけだ」
「いや、苗字も流石のシュートだったぞ!」


不機嫌そうな大和と一緒に白竜君も会話に加わってきた。護巻君もいる。そういえば大和はええと…ドラゴンリンク?フィフスセクターの…ああ分かんないからいいや。とにかく強いチームのキャプテンで、白竜君も…ゴッドエデン?のフィフスセクターの…「苗字、すげえ難しい顔してどうした」「いやあ…うん、分かった私もう何も考えない」「?よく分からんが、千宮路の下僕ならしっかりしないと捨てられるぞ」「いつ私が大和の下僕になったの!?」護巻君ちょっと撤回してくださいお願いします!




なんだか仲良くなってきました



(2014/03/03)

出せなかった子らは後々出したいなー…とりあえず次はジャパン側が試合です
護巻君と主の化身が被ってるんですがクイーンレディアさんなら何体フィールドにいても許せるのでそのまま突っ走ります