トビアスとハロウィン



「「トリック・オア・トリート!」」
「…………は?」
「こんばんは、トビアスさん!お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ!」
「しちゃうぞ!」
「しちゃいますよ!」
「お菓子!おかし!」
「……は?」


「あれ、もしかしてトビアスさんって、ハロウィン知らないの?」
「知らないの?」
「…ハロウィンとは、なんだ?」
「ええーっ!?ほんとに知らないんだ!?ナマエちゃんはハロウィンのお菓子作りで、昨日からエンジェルたちと調理ギルドにこもってるのに!」
「なっ、」
「町中ハロウィン一色なのに!」
「なのに!」
「た、確かにカボチャや蝙蝠の装飾が多いとは…」


「ハロウィンっていうのはですね、トリックオアトリート!お菓子くれなきゃイタズラちゃうぞ、って言われたら、お菓子をくれるかイタズラさせてくれなきゃいけないんです!」
「です!」
「要するに、祭りか?」
「うん、お祭り!」
「おまつり!!」
「それで、今俺は菓子を与えるか、悪戯を許すかという選択肢を迫られているのか」
「うーん、よくわかんないけど、あってる!」


「………致し方あるまい。煮物では許してくれないのだろう」
「にもの?」
「カボチャの煮物だ」
「煮物はお菓子じゃないからだーめ!」
「だーめっ!」
「なら、これを持っていけ」
「…これなに?」
「ナマエから習った、カボチャとチョコレートのクッキーだ」
「くっきー!!」
「クッキー!」
「わーい!トビアスさんありがとう!ハッピーハロウィン!」
「…は、はっぴーはろうぃん…?」
「"良いハロウィンを!"ってことだよ、じゃあねっ!」



**


「…と、いうことがありまして」
「ふふ、お菓子配ってたら自慢しに来たよ、その子たち」
「自慢?…まさか」
「トビアスさんの手作りクッキーだよ、ナマエいいでしょ!って。羨ましかったから、自分のお菓子と交換してもらっちゃった」
「貴方の分を、俺が渡すとでも?」
「えっ、そんなこと思ってないよ。単なる、ただの独占欲です」
「……恥ずかしいことを言わないで頂きたい」


「それで、ですが」
「ん?」
「もし悪戯をされていたら、どんな風になっていたのでしょうか」
「あー、トビアス、こっちの文化に疎いもんね。そうだなあ……、……」
「ナマエ?」
「甘党と辛党の争いに巻き込まれた果てでバルサミコ酢と対決することになるかな」
「は?」
「…ごめんなんでもない!こっちの話!」


20161031