再会のような出会い
「シンシア…!?」
風になびく髪も、その目の色も、服装も―――全てが幼馴染にそっくりで。
すれ違いざまに、思わずその腕を掴んでいた。
有り得ないと知っていても、淡い希望と興奮が体中の全てを支配した。
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「………あ、あの……?」
「…………」
当然だが、別人だった。顔こそよく似ているがシンシアはこんな怯えた表情を俺に見せるはずがない。声もシンシアとは少し違う。人間に、…俺に怯えるようなことはシンシアに限って有り得ない。
落胆する自分の心。遠目で見た時に本物のシンシアかと見まごうほどに似ていたし、何より羽根帽子をかぶっていたから思わずその腕を掴んでいたのだ。「ちょっとソロ、何やってんの?」遠くから愉しそうなマーニャの声が耳に届いてはっと我に返った。目の前のエルフの少女は本当に戸惑っているようで、『困っている』と顔にありありと浮かんでいる。感情を読み取り易いところは少しシンシアと似ているかもしれない。
「……悪かったな、知り合いとすっげえ似てたから」
「そ、そう、ですか」
ゆっくりと手を離すと、少し気まずそうに距離を取られた。そりゃあ人と接する事がほぼ無いであろうエルフなのだから当然だと言えば当然だ。いきなり腕を掴んで見つめられればそりゃ誰だって気まずいだろう。今更ながらに自分の行動の迂闊さを呪い、その場をどう誤魔化せばいいのか分からず、俺も気まずくなって目を逸した。沈黙が場を支配する。
「……あの」
「へ?あ、俺?」
以外な事に、沈黙を破ったのは目の前のエルフの少女だった。一瞬間の抜けた声が出て、確認のために自らを指差してみせる。こくん、と頷いた仕草は幼馴染と少し通じるものがあって、目の前の少女がシンシアに重なって見える。どくん、と心臓が高鳴った。――直後、苦々しいものが口の中に広がる。なんとか顔に出さないように「何か?」と目の前の少女に問いかけた。目線は彼女の方が下だから、彼女は必然的に俺を見上げる形になる。
「あの、………先程、シンシアと?」
「………」
答えないわけにはいかないだろう。リアルな現実感と気まずさを感じながら俺は髪の毛をぐしゃぐしゃとかき混ぜた。心の中でだけ溜め息を吐いておく。シンシアの名前は久しぶりに口に出す事になるから、少し緊張したのかもしれない。目の前の少女の目を見据えた。
「……アンタに似てるってやつが、シンシアって名前のエルフだったんだ」
「それは本当ですか!?」
「っ!?あ、アンタ、何か知ってるのか?」
告げた瞬間、シンシアとよく似た少女の目は見開かれた。――かと思えば次の瞬間、胸ぐらを掴まれ引き寄せられる。近くで見れば見るほどよく似ているその顔はとても切羽詰っていて、目尻には涙が一粒浮かんでいた。一体なんだと、
「シンシアは、シンシアは今どこにいるんですか!?」
「お、おちつ、け!」
「元気なんですか!?ちゃんと食べていますか!?―――幸せにやっているんですか!?」
「――ッ、離してくれ!」
がくがくと揺らされ言われた言葉は耳をすり抜けていた。「あ、…ごめんなさい!」慌てたように手を離し、俺に頭を下げる目の前の少女。そこで俺はエルフや動物、そして興味深気なマーニャとライアンの視線が集中している事に気がついた。「とりあえず、場所を移動してもいいか?」「はい、大丈夫です」先に歩き出したのは彼女。案内はとても有難いので、俺は素直に従った。
―――彼女がシンシアの双子の妹だということを、この時の俺はまだ知らない。
再会のような出会い
(2013/06/03)
バトルものでない話なら、こんな連載やりたいです。
どうしても夢主にシンシアちゃんを重ねて、シンシアちゃんを守れなかったからってエゴで夢主を守るソロと、関わるたびにソロに惹かれていくのにソロが自分にシンシアちゃんの面影しか求めてない事を嫌って程見せつけられて、でもそれでもソロが好きなのをやめられない夢主とか。
時間ができたら連載したいなあ…