03


「……ラヴィエル?」
「ああ、そのとおり。……初めまして、だな。私の事は分かるのか?」
「も、もちろん…!初めまして、ナマエです……って、様付けた方が良いのかな」
「いや、今のキミの本質は天使ではない。何より以前のナマエも私の事は呼び捨てにしていたしな。構わない」


明らかに主人公より上位の天使なのに、呼び捨てを許してくれるなんて。お師匠さまの厳格さと比べてラヴィエルの優しさに思わずほっこり――…したかったけれども!優しく口元を緩めるラヴィエルは今、『今のキミの本質は天使ではない』と言ったよね!?


「も、もしかして分かるの!?」
「……ああ、一応は」
「って事は!」
「多分おそらく、私は今の状況を把握している」


厄介な事に巻き込んでしまって済まないな、と自嘲気味に呟いたラヴィエルが私の頭にその手を触れた。ぽんぽん、と優しく触れられるそれに思わず目を見開いてしまう。
――あったかい。安心する。ここはどこ。私、帰れるの。


「…っく」
「ちょ、ちょっと!何泣いてんの!?てゆーか、アタシを置いて話進めないでヨ!」


……嗚咽を漏らして私は涙を流した。怖い。怖かった。不安でしょうがない
まったくわけのわからない状況なだけに逆に冷静になったりもしたけれど、やはり不安で仕方無かったから、手が、優しくて。なんで。…どうして私はゲームの世界に入り込んでしまったの?帰りたい。今すぐ帰りたい。平和な、穏やかな、あの世界に。


「サンディ。単刀直入に言う。――今のナマエは今までのナマエとは別人であり、そして同一人物なんだ」
「……い、意味不明なんですケド」
「彼女はこことはまったく違う、別の世界から連れて来られたらしい」
「は、はぁ!?ちょ、―――……じゃあナマエは!?アタシと旅をしたナマエ!」
「それは紛れも無くこの子で間違い無い。……どうも、上手く説明出来ないな」


戸惑うサンディにラヴィエルが言葉を探っているらしかった。しかし諦めたのだろうか、首をゆっくりと横に振る。


「サンディ、ナマエ―――セレシア様のところに行って来い」
「……セレシア様って、あの?」
「なんでヨ?」


涙を拭ってラヴィエルを仰ぐと、静かに頷く銀髪の天使。


「―――セレシア様が、キミをこの世界に呼び込んだんだ」



天界へ




(2013/03/21)