八万打企画/未来へ誘拐される



「よう!久しぶりだな、苗字名前?」
「ザナーク、間違い無いか」
「おう、ったりめーだ。元気だったか、名前」
「………ん?どこかで見たような……」
「唐突で悪いが、来て貰うぜ」
「ふぁっ!?」


**


何が起こった。

フェイ君とワンダバが来てみんなとサッカーはじめたから、追加のドリンクを作ろうと私はドリンクの粉を取りにグラウンドから倉庫へ向かっていた。すると、薄紫色のマッシュルームのようなコスプレ男子が出現したのだ。…と思ったら、彼は未確認飛行物体を携えていた。その隣にはバイクのような(どこかで見覚えのある)ものに乗ったド派手な服装の男がいた。切る前のハムをたくさんくっつけたかのような髪型だったが、生憎食欲をそそらない深緑色。彼は私にフレンドリーに話しかけたが、直後私の首の後ろに手刀を遠慮無く叩き込んだ気がする。とんっ、じゃなくてドスッ!だった。その後薄れゆく意識の中で見た光景はカオスの一言。未確認飛行物体から発射された紫色の光に包まれて体が浮き、そして今に至る。

目を覚ましたと思ったら目の前に白菜のようなヘアースタイルをしたコスプレ男子が何故か薔薇を片手に私を覗き込んでいた。ここは農園か何かですか?いや、キッチンなのか?一番美味しそうな色だねあなた。そんなことより、ここってどこだ?自分についての記憶はあるから、最悪の事態ということはない。とりあえずここはどこか、そう問いかけたいがそれよりももっと大事なことがある。まずはそれをこの男に告げねばいけない。


「やあ、お目覚めかい?」
「目覚め一番に覗き込んでくるのは可愛い女の子だって相場が決まってるんだ!」
「……は?」
「可愛い女の子が来るまで、私は目覚めんぞ」


いや、あなたの顔が悪いってわけじゃないよ?とひらひらと手を振る事は忘れない。まあ、普通の女の子ならばどきどきと目を覚ますようなシチュエーションなのだろう。しかし私はどきりともなんともしませんでした。ごめん。いやー、整っているとは思うよ?うん、綺麗だと思う。その白銀の髪を馬鹿にしているわけじゃない。しかし、目を覚ました直後に出会わなくても良くないか!?目を開けたら可愛い女の子が介抱してくれていて、『あっ、目が覚めた?』って抱きついてくるのが理想です。さあテイク2行きま、


「………目を覚ませ、苗字名前」
「その声は私を未確認飛行物体で連れ去った薄紫だな?可愛い女の子を連れて出直せ」
「おいアルファ、本当にこいつと戦う事で我々にプラスが得られるのか?」
「その声可愛い!誰!?」


テイク2万歳!耳に届いた女の子の声に跳ね起きると、無表情な薄紫と金髪のロングヘアな可愛い美少女が立っていた。薄紫の隣にいるのは女の子か?二人もはべらすなんて贅沢な!「……アルファ、彼女は」「あ、なんだ男の子か……男の娘か!?」がしりとハニーブラウンの髪をした少年の肩を掴む。すると、「待ちたまえ、エイナムを見て目を輝かせるのにこの僕を見て残念そうな顔をした理由を聞かせてくれないか?」と銀髪の少年が私の肩に手を置いて顔を引きつらせながら質問してきた。「や、目覚めの最初はそこの可愛い彼女が良かったなーって」満面の笑顔を返しておく。

「ノー、レイザに何をするつもりだ」ふむ、金髪の彼女はレイザちゃんと言うのか!「抱きつくだけの簡単なお仕事を」手をわきわきとさせてレイザちゃんを振り返ると、物凄く嫌そうな顔をされた。「アルファ、本当にこの女で合っているのか!?」「順応出来る気がしないのですが…」ふむ、薄紫改めアルファはこの二人にとても懐かれているらしい。私を見て少し眉を潜めたアルファは、なんだかとてもレアそうな溜め息を一つ小さく吐いた。「イエス、……このようなタイプは珍しいが、一時期ならばなんとか出来るだろう」


**


「何ここ天国?」
「やあ!初めまして、君が天馬やフェイの言っていた苗字名前…」
「あなたみたいな可愛い女の子とサッカー出来るなんて生きてて良かった私」
「聞いてくれないか!?………メイア、君からなんとか言ってやってくれ」
「ごめんなさい名前さん、私にはギリスという最高のパートナーがいるの」
「ギリスって誰?私とメイアちゃん賭けて勝負しよう?」
「フッ、受けて立とうじゃないか!メイアは誰にも渡したりなどしない」

「……時間が勿体無いだろう、そこの三人」


私が(渋々名乗った)アルファとガンマ、レイザちゃんとエイナム君に案内されたのはかつてラグナロクが行われたというスタジアムだった。ラグナロクが何なのかはまったく分からない上に天馬君達が時空最強でどうのこうの、という説明も受けたのだが足りない頭は考える事を全て拒否した。可愛い女の子いっぱいだったから、どうだっていいや!ということである。四人に紹介されたのはセカンドステージチルドレンと呼ばれていた少年少女。SARUと名乗った白髪の少年が天馬君に似ている気がしたのは私だけだろうか。


「僕があなたに興味があったから、ここに呼んだんだけどなあ」


苦笑いをするのはSARU。「なんで天馬君達じゃないの?」「だって名前の方が面白そうだったし」フェイからあなたの事は色々と聞いているよ、と笑うSARU。面白そうという理由で私はアルファともう一人に誘拐されたらしい。エルドラド…?という組織にアルファ達は所属しているとかなんとかで、そのエルドラドのチームとセカンドステージチルドレンで試合をする事になったらしい。そこに乱入してきたのが、


「俺もお前に興味があったんだよなァ」
「再三聞き忘れてたんだけどさ、誰?」
「俺様はザナーク・アバロニク!名も無き小市民だ」
「小市民にしちゃあ悪人面だねー」
「うるせえ!」


ザナークである。何故この男が私を知っているのかというと、以前私がザナークのバイクもどき(ルートクラフト)に跳ね飛ばされて記憶を失ったからである。ザナークは私たちの時代で見た私たちのやり取りを見て、面白そうだという理由だけでSARUに私を推薦したらしい。解せぬ。顔だけなら最上級なんだが、と失礼な言葉を吐いて私の髪の毛に手を突っ込んでこようとしたザナークを足払いで振り払い、「モリーちゃん!」と緑髪のツインテールの女の子へ駆け寄った。「んー?」なあに、と言ってにこりと笑うモリーちゃんにきゅんきゅんする。身長も小さい彼女に誘惑されっぱなしな私。リア充には構っちゃいられないが、あれだけイチャつかれると逆にあの光景が可愛く見えてくるのは何故だろう。

そもそもここにゆうk「誘拐ではない、招待だ」…招待されたのは、サッカーのためらしい。「アルファ、無理があるんじゃない?私一人を連れ去ってもねえ…」「ノー、これは我々のコスト削減の計画を練りこんだ素晴らしい案だ」何がコスト削減だ。サッカーやるのはいいけど、私は自分の時代に帰れるんだろうな?「スマート!心配しなくていい、すぐに"来る"さ」…来る?何がだろう、とガンマの言葉に頭を捻るとSARUがけらけらと声を上げて笑った。「え、私おかしな事言ったっけ?」「ははは!天馬達は信用されてないんだねー」「……苗字名前、我々がどうしてあのような目立つ場所で誘拐を行ったか分からないのか」ちょ、誘拐って認めるなアルファ!…目立つ場所?







「名前さ―――ん!」
「―――せんぱーいっ!」


空中から飛び出してきたキャラバン。窓から顔を出すのは剣城と天馬君、他サッカー部のメンバー。ほら来た、流石は僕の作戦だねとにこやかに笑うSARUにザナークと同じく足払いをかけると見事にひっくり返ってくれた。「私で皆を釣ったのか!」全員の私への好感度が下がりすぎてなくて良かったな!来るか来ないかで賭けでもしてたら面白かっただろうに、というのは完全に照れ隠しなのを自覚している。来てくれて純粋に嬉しいし、久しぶりにサッカー出来そうだ!



未来でサッカーをしてみよう

(先輩、どうしてSARUが倒れてるの?)
(それはね天馬君、私にセカンドステージ…ナントカのキャプテン権を譲るためよ)
(えっ!?)

(2013/07/11)

八万打企画より、とじむー様リクエストの未来に誘拐される話でした!
欲張りに欲張ってエルドラドでは飽き足らず、セカチルやザナークも絡ませてみました。
サッカー落ちが安定している気がします。この後、地に伏せた皇帝を押しのけセカチルメンバーから女子だけを選出し、エルドラドメンバーや雷門メンバーと試合を開始する夢主ですが、多分最後の方はみんなチームごっちゃごっちゃで楽しくサッカーしてたらいいなと思います。イナクロ未来組が楽しくサッカーしてる図を想像したらこんな感じになりました。ザナークとの絡みは二万打であったので、地味に顔見知りな設定がくっつきました。

モリーちゃんはごめんなさい、私が彼女を大好きだというだけです。眉可愛いですよね彼女!ちっこい!可愛い!天使にみえますモリーちゃん。もっと他のセカチルメンバーとも絡ませたかったというのが心残りです…

リクエストありがとうございました!