Kサンドイッチ
※倉間視点

苗字先輩って、一歩間違えてればただのウザイ人ですよね?どうしてあんな人なのに…なんだかんだ皆から(変に)信頼されてたりそれなりに好かれてたりするんですか?


「おまっ……」
「素で知りたいんですけど、俺」


真顔で問いかけてきた剣城に思わず持っていたドリンクを落としてしまう。剣城の真顔でそんな事を聞かれるとは思っていなかった俺。驚きというより呆れが…そんなに名前の事が知りたいのか。恋ってすげえ。


「剣城、お前………」
「……いや、別に俺が先輩をウザいと思っているわけではなくてですね?」
「ああうん、そうだとしたらお前はウザいと本気で思っている相手を好きだということだな」
「いやだから俺は別に、っ」
「頑張れよ――色々な意味で?」
「疑問符やめてください怖いです」


――恋、なのか?応援すると本気で眉を寄せる剣城に思わず苦笑した。しかし……確かにそう思う。何故あんな変態野郎(女だけど)は疎まれたりしないのだろうか?それは当然の疑問だろう。まあ俺は顔だと思う。ほら、可愛いは正義って言うじゃないですか。


「倉間お前馬鹿か!?剣城が求めてるのはそんな答えじゃない!」
「うっわあああああ霧野お前いつの間にそこに!?」
「ああ俺?"苗字先輩は一歩間違えれば〜"のところから」
「最初からだよな何で気配消した!必殺技をそんな事に使うんじゃねえ!」


いきなり飛び出てきた霧野に俺は思わず叫び剣城は絶句。そして何故か俺の胸ぐらを掴み上げ説教する霧野。周囲にうっすら漂っているのは霧野のザ・ミストの残骸らしい。えっ、何で俺怒られてんの?俺顔意外にあいつの良いとこ知らねえわ。ガチで。いやマッサージの腕とかマネジの腕とかあと意外に男前なところはまあ……いや普段の態度で帳消しだ。残るのは顔しk、


「倉間……名前に本気で消されても後悔は無いのか?生き急ぐな」
「分かったもう何も言わねえ」
「よろしい」


霧野の目が本気で俺を哀れんでいたので黙る事にする。とりあえず話を振ろうと剣城を振返――……


「な、な、なッ……!」
「ああ、聞いてたぞ?剣城お前勇気あるな、名前が好きなんだってな!まあ知ってたけど!」
「うわああああ倉間先輩ィィィィィィ!?」
「落ち着け剣城、霧野は知ってたと言っている」
「な、ななななんで知ってるんですか!」
「神童に恋する女子と同じような目を名前に向けてたからな」
「うわ歪みねえ」
「そ、それ違、違っ、違います!」
「素直になれよ………つ・る・ぎ?」
「おお、対女子用悩殺スマイル……」


色気をたっぷりと含んだ霧野の笑顔(という名のニヤケ顔)に剣城がたじろいでいるのは珍しい光景だ。思わず写真に収めたくなるがそれを名前にでも見られてしまえばまた『新たな世界が!』とか言い出しかねないので携帯を取り出すという選択肢は消滅。あいつ最近変な方向にも目覚めそうになってるからな。今のままで十分だ。神童に罵られたいとか言ってるだけで俺はSAN値が削られているというのに。


**


「で、何の話だったっけ?」
「名前は何でウザがられないのかっていう話」
「倉間は割と本気でウザがってるだろ?」
「ウザいよ!あいつはウゼえよ!……でも離れられねえ謎因果……おい剣城羨ましそうな目で見んな、良い事なんて一つも無ェ」
「因果?」
「俺、あいつと幼稚園の頃からの付き合いなんだよ」
「えっ」
「だからあいつの小っさい頃の写真とかあるぞ?あの頃は名前も天使のようで……」
「見たいです」
「見せてやれ倉間」
「俺が化身シュートを腹にくらっても良いとお前らは言うのか」


「ちなみに俺と神童は最初女と間違えられて声かけられたのがきっかけだった」
「そりゃまた難儀だな、つーか初めて聞いたぞそれ」
「……あのテンションで?」
「ああ。最初何だこいつとか思ったけどな、俺はウザいとは思わないぞ?」
「何でだよ!霧野寛容過ぎるだろ!」
「倉間、多分それはお前の心が狭いんだよ」
「うるせえ」
「霧野先輩、続きを」
「おお、そうだったな。悪い悪い」


「何て言えば良いんだろうな?あいつは踏み込んで良い距離をきちんと知ってるんだよ」
「"踏み込んで良い距離"…?」
「人だったら"ここまでは踏み込んで欲しくない"領域があるだろ?あいつはそのスレスレで好き勝手やってる感じかな」
「俺の場合土足で入り込んで荒らされてんだけどどうしたらいい」
「頑張れ」
「……頑張ってください」
「可哀想なものを見る目で俺を見るな!」


「まあ倉間は付き合いの時間が長いからだろ。単純に」
「あんなのと長い時間を過ごす身にもなってみ……すまん剣城」
「いえ、気にしません」
「(あっこれイラついてる顔だな)」
「まあまとめると、名前は相手の人となりを知った上でふざけてる感じだろうな。腹の底でも何も考えてないだろうから、多分無意識なんだろう」
「多少イラっとしても顔と胸で許されるタイプだからな」
「それはタブーだ倉間!」


「「まあ、とりあえず」」


「頑張れよ剣城。名前は手強いぞ」
「あいつをお前の力で普通の女にしてやってくれ」


「……はい」



グランドの隅のKサンドイッチ


(2013/04/30)

タイトルはその場の思いつき。
?K=剣城を倉間・霧野で挟んだ結果。
一応仮タイトルなのでいつか変えます。