涙する

「あー、重かった!」
「やっぱ重かったんですか?」
「当然でしょうが。まあ剣城よりは力あると思うし、お疲れさん」
「……はい、うわっ!?」


資料提出を終えて軽くなった鞄を投げたり受け止めたりしながら、空いた方手で剣城の頭をわしゃわしゃと撫でる。
迷惑そうだなんて気にしない。よく頑張った!と言うと子供扱いするなと怒られた。
ロビーに戻ると木戸川清修の三人がいる。アフロディさんの姿は見えない。
手を振ると貴志部君は少しはにかみながら手を振ってくれて、快彦君はぺこりと頭を下げてくれた。
えっ、総介君?ガン無視ですが何か!しかし私はめげないぞ。ツンデレ属性は倉間で攻略済みだ!あ、でも倉間のあれはデレじゃないな。罵倒だな。あの冷めた目は嫌いじゃないけど。
ツン罵倒?何それ新ジャンル過ぎる。むしろウザがられてるからあれはマイナスだし……


「なんかすっごく悲しくなってきた」
「……元気出してください、良いことあると思いますよ」
「剣城の慰め方が妙に心に刺さるんだけどどうしたらいいかな貴志部君」
「え、えっ?俺にいきなり振られてもっひゃああ!?」


まごまごと戸惑う貴志部君にすがりつく。可愛い声ごちそうさまです、ってなんかちょっと良い匂いがする
すん、と鼻を鳴らしてみると確かに香る男の子らしからぬ優しい香り。ワーオ女子力!
シャンプー何使ってるんだろう。すんすん、ともう一度鼻を鳴らす。髪もふわふわだし何この子連れて帰りた、


「この変態女!貴志部が困ってンだろーが!」
「わぐぁい!?ちょ、首くびくびぃぃぃ!?いだいいだい!」
「大げさに騒ぐな!……うるっせえヤツ」
「グーで殴られた上に首引っ張って突き飛ばされたら誰だって痛いよばかやろう!」


今遠慮無かったぞこいつ!な、なんだと言うんだ……!そんなに私が嫌いか!
初対面の女の子をグーで殴るなんて最低過ぎる。グーって。グーって。くそ舐められるなんて嫌だぞ私は。私が王者だ!
拳で友情を語り合いたい衝動に駆られて指をポキポキと鳴らす。―――が、そんな衝動は一瞬で吹き飛んだ。


「何してるんだ総介!苗字に謝れ、女の子にあれは無いだろう!」
「でもお前だって困ってたじゃねえか」
「べ、別に困ってなかったぞ」
「おま…っ」

「ちょっ、剣城聞いた!?剣城聞いたっ!?」
「な、何をです?」
「貴志部君が私を女の子扱いしてくれたよ!」



変態さん涙する

(快彦、僕が席を外している間に何があったんだい?)
(えーっと、兄さんと苗字さんが揉めて、貴志部先輩が苗字さんを女の子って言ったら)
(先輩が俺にすがりついて泣いてる状態です)
(私女の子扱いされてよかったんだね…!)

(……可愛い)
(貴志部、目を覚ませ)

(俺は別に可愛いとか思ってねえし!)

(そういえば総介君を叱る貴志部君の図にちょっと新しい世界への扉開きかけ、)
(開かないでくださいお願いします)


(2013/03/30)

さて、木戸川清修のターンもそろそろ終了。
ちゃんと雷門に帰らないと、ですね。
次はしばらく先かもしれないけど、海王とか聖堂山とかとも絡ませたい。