本領発揮

「お、男の人ォ!?」
「?そうだよ、分からなかったのかい?」


目の前のアフロディさんが髪をさらりと梳く。その動作の一つ一つでさえ綺麗過ぎて言葉が出ない。
この世の中にこんな、女の人より美人な男の人がいて良いんだろうか?あ、でもアフロディさんなら許せるや
そんなに男には見えないかな、と呟く彼にぶんぶんと首を振って見せる。そんなことないんです、


「あまりの美しさについ…!」
「へえ、そうかい?分かっているね……おいで、名前」
「アフロディさ「その辺にしてください」うわっひゃい!」


見上げながら答えると手を差し出されたので飛びつこう――とすると剣城に腕を引かれて距離を開けられた。よろめいたがバランス維持には問題無し。
何するの、と言おうと思って振り返ると剣城の顔が不機嫌そうだった。なのでやめておくことにする。
……ま、まあうん先輩として恥ずかしいね!資料提出まだだったよ!
それでもアフロディさんが輝いて見えるのは事実なのでついつい目がいってしまう。その足元の可憐な影にも。


「え、えーと…さっきはその、いきなり抱きしめちゃってごめんね?えーと、快彦君だっけ」
「…………………その、気にしないので」
「剣城どうしよう!天使に嫌われたっていうかドン引きされてる!」
「自業自得じゃないですか」


あれ?どうしたのかな、剣城が冷たい。「しょうがないですね」ぐらいは期待してたよ私
だんだん私の扱いに慣れて来たんだろうか。私の扱いに手馴れた後輩……うわっ嫌だ。剣城ほんとごめん
恐る恐る剣城の顔を覗き込むと目からひしひしと感じる単語があるのは気のせいですか?言っとくけど私はショタコンじゃないぞ


「ただ可愛いものが好きなだけだからね!」
「は!?い、いきなり何言いだすんですか俺に向かって」
「剣城の目が私のことショタコンって言ってるみたいに聞こえて」
「どんな幻聴ですか。……また引かれてますよ」


剣城が指差した先にはアフロディさんの背後にこそこそと隠れる快彦君。や、やっちまった……!
若干呆れたような剣城の顔がますます痛い。やめて、そんな目で私を見ないで
どうせなら蔑むような目で見て欲しいよなーなんて言ったら流石にデスドロップどころかランスロットさんが飛び出てきそうなので自重する。
でも剣城に蔑むような目というか、攻めはありきたりだよなあ。私はどうせなら剣城を押し倒して真っ赤な顔と涙目を拝みたい。
ちょっと気弱そうなタイプにこそ蔑んだ目で見られたいんだよな……あ、


「貴志部君とか受けっぽいけど、攻めになったらすっごい貪欲そう。こういうタイプにこそ押し倒されたいよね!」
「へ!?」
「はあ!?」
「先輩っ!?」
「……へ?私何か変なこと言った?」


別に変なこと言った気はしないんだけど。



変態さんの本領発揮

(……な、な、なっ!?)
(貴志部ー!?お、おい貴志部が真っ赤になって倒れたぞ!?)
(つつつつ剣城君!?き、君の先輩どうどどすどうし!?)
(…………………)
(剣城君放心してる!?も、戻ってきてー!?)

(へえ、無自覚でこれとは面白いね)


(2013/03/25)

※ただしイケメンに限る(女性Ver)