サッカー協会へ続く道で 2


『で、剣城にパシられてんの?あんた』
『失敬な!後輩に荷物全部任せる先輩がどこにいる』
『うっわバケモノ!?』
『そこのパンダっぽい君はとっても可愛くてストライクゾーンだったのに残念だよ』
『剣城の先輩?……なあ、アンタ本当に中学生?』
『中学生だよばっかやろう!』


**


「はい、ごめんなさいは?」
「「ごめんなさい」」
「……よろしい」


先程の会話を思い出すと、やはりまだ胃はムカムカする。しかし謝ってくれたのだから……まあ、よしとしよう。
半分は無理矢理に言わせた謝罪の言葉を受け入れて、二人を押しつぶしていた荷物をひょいっと持ち上げる。
しかし男子の癖に情けない。持っていた荷物をパスしただけなのに受け止めきれないとは。
確かにかなり大きいけれどもそんなに重くはないと思う……んだけどなー?
解放されるなり二人の少年は新たに現れた緑髪の少年の背後に隠れてしまう。見ればその彼が荷物をまとめて一輪車で運んでいるらしかった。


「……そんなに重い?」
「剣城、そいつバケモンじゃねえの!?」
「資料に埋もれさすぞ」
「すいませんでした」
「分かればいいんだよ分かれば」


決して化物ではなく通常の女の子より力があるだけだ。それ以外は普通のぴっちぴっちの中学生だ!…多分。
そう、あの出会いの後。
黒髪白メッシュの少年とパンダみたいなお団子少年は、私の事をバケモノな上に本当に中学生か疑いをかけてきたのである。
なので天罰。つまりは天誅。くう、特に年齢詐欺疑惑は許せん!さらっと人が気にしていることを…!
やっぱり身長なの!?高すぎるの?倉間と身長を足して割りたい…っ!


「剣城、私も男に生まれたかった……」
「いきなりそれ俺に言われても」
「中学生に見えないって、それ老けてるって事だよね……」
「いや、磯崎もそこまでの意味を込めて言ったわけじゃないと思」
「大体鍛えてたらちょっと力がついちゃっただけで、普段はセーブしてるしそんなに強くないはずだし……」
「えーと……」
「あ、剣城困ってるねごめんね?……はあ」


これ以上ネガティブな気分になるのはやめよう。ますます虚しくなる。
出来る事ならば普通の非力な女の子に生まれ……いやそれは勿体ないな、サッカーに役立ってるわけですし。うん。
そうそうサッカーに関しては力が強い事で男子との差を埋めているわけだし!うん!
溜め息を吐いて立ち上がる。そういえば目の前の三人の名前を聞いていなかった。


「で、君たちは?」
「……へ?」
「お名前ですよヘイプリーズ。私は苗字名前で二年生。はい君たちは?」


言っとくけど荷物投げつけた事に関しては謝らないからな!


「万能坂二年、光良夜桜…だけど」
「同じく一年で磯崎研磨だ」
「………篠山ミツル、一年」


ふむ、メッシュ君は磯崎君で緑髪君は篠山君で、パンダっぽいのは光良か。そして光良以外は年下か!全員一年だと思ってたわ。
とりあえず三人中二人は学校が違うとはいえ剣城の知り合いで年下、つまり後輩なのだ。
ならばやるべき事は一つ。というか後輩に荷物ほとんど任せてるなんて光良……


「よし、篠山君は私が荷物を半分持ってあげよう」
「更にですか!?」
「お、剣城心配してくれてる?でも大丈夫、まだ全然余裕だから」
「すっげえイイ笑顔のとこ悪いんだけど、何で篠山だけ!?」
「光良だっけ?先輩なら後輩に優しくするのは当たり前でしょうが!」
「おい見ろよ篠山!光良が先輩道説かれてる!」
「しかも最もな意見だからか反論出来てねえ!」
「お前ら楽しそうだな……」


呆れたような剣城の声が耳に届くけれど、とりあえず可愛い知り合いが増えました。



変態とサッカー協会へ続く道で 2

(こ、この俺に意見するとはいい度胸だ!後悔しても知らないからなっ!?)
(お?)
(――『奇術魔ピューリム』!)
(おお!化身使いなの!?今凄い勢いで親近感高まった!)
(おい磯崎ィ!ボール持って来いよ、あははっ!)
(持ってねえよ!)
(ほらほら私も!『魔女クイーンレディア』!)
(アンタも化身使いかよ!)


(なあ剣城、お前の先輩こう……漢気に溢れてるな)
(……かなり変だけどな)
(それはお前も認めるのか)


(2013/03/02)

夢主は基本的にこんな感じの基準で相手を呼んでます

年下=○○君、ちゃん
同い年=呼び捨て(名前やら苗字やら呼び方バラバラ)
年上=○○先輩、さん

磯崎は老けてるって意味じゃなく良い意味で見えないと言ったのに勘違いされた子
頑張れ磯崎。