Erste Liebe


「まさか、君たち二人が決勝に上がってくるなんてね?」
「見直したぜ苗字。予選もさっきの試合も観てたけど――やれば出来るんじゃねえか」


戦闘実技試験トーナメントの決勝戦。
真正面にはエスカバ君とミストレ君、隣にはもちろんバダップが居る。

あれから数日後。

晴れて恋人同士になった私達だけれども、だからと言ってバダップが戦闘実技の練習に手を抜くはずはまったく無かった。皆無だった。
むしろ以前より厳しい修行だったそれを乗り越えた私は、最早予選なんて簡単に突破出来てしまうぐらいに成長していた。


「へへ、二人にも負けるつもりはないからね!」
「おーおー、学園一の落ちこぼれだったくせに言うようになったじゃん」


どことなく嬉しそうにミストレ君が笑う。釣られて私も笑った。
それが気に食わなかったのだろうか。――ぐい、と肩を引かれてぼすん、とバダップの胸の中に引き込まれる。


「当然だ。――俺の恋人なんだからな」
「「はァ!?」」
「ちょ、バダップ何故今それをここで!?」


これ今学園中に中継されてるのに!?
唖然とする観客、目の前の二人、――私。満足げにそれを確認した後、バダップは私の顔を引き寄せキスをした。
―――え、何気に初めてのキスじゃないですか、何故ここで!?


「「「キャ――――――――ッ!?!?」」」
「おっ、おま、おま、バダップ!?」
「………エスカバ!殺るぞ!」
「おい待てミストレなんかちげえええ!漢字が!違え!」
「フッ、やれるものならやってみろ」


上等だァ!と叫ぶミストレ君を必死で抑えつけるエスカバ君が目に入るけれど体が動かない。
力が抜けてふにゃふにゃになって、顔がひたすら熱いのだ。
そんな私の様子は見事に小型カメラに収められていたらしく、再び観客席から歓声が上がる


「………は、はじめてだった」
「そうか、俺もだ」
「リア充爆ぜろ!つーか俺がこの手で爆ぜさせる!おい審判さっさと決勝開始しろよ!」
「おーちーつーけ!まだ後20秒あるっての!」


ステージ上はまさにカオスな状態となっている。決勝試験開始まで、後15秒。


「………おい名前、おめでとう」
「え、ミストレ君?」
「バダップ、出来の悪い娘だけどよろしく頼むよ」
「当然だ」
「――幸せになれよな、バーカ」
「え、ちょ、娘って何――――」


――――問いかけの暇すら与えてもらえず、ホイッスルが鳴り響いた


Erste Liebe


(これはきっと運命だったんだ)
(初恋は叶わないなんて言うけれど)
(私達なら大丈夫)
(ねえ、そうでしょう?)

(ああ、勿論)
(これからは、絶対にその手を繋いだまま離さない)
(バダップって時々すっごいキザなセリフ言うよね!?)
(照れているのか?)
(―――ッ!鬼!鬼畜!知ってるくせに!)

(……娘が嫁に行った父親ってこんな気持ちなんだろーな)
(あークソ、バダップまじぶっ倒す)
(普通に二人の幸せ祈れよお前は!)
(さっきのはなんだったんだ!)

(ずっと、大好きだよ)



(2013/02/03)