正直に、好きって言えよ

私は本当に不器用だ。
不器用で、素直になれない、意地っ張り。
女の子らしくなりたいと思っても、似合わないって決め付けて、――自分から遠ざけた


「ナマエ、可愛い。――すっごく」
「……あ、あり、がとう」


開口一番、ミストレに普段の少し妖し気な色気のある微笑みではなく満面の笑顔でそんな事を言われて戸惑ってしまう。
幼い頃以来ではないだろうか。こんな可愛らしいものを身に着けたのは。
戸惑いながらも薄いピンクのドレスに合わせたヒールのある靴を履いて家を出る。

エスコートしてくれているミストレも真っ黒なタキシードに身を包んでいた。
髪の毛も普段の三つ編みではなく上の方に纏めていて……そんな姿に心臓がばくばくと鳴り響く。


**


「ねぇナマエ、―――君はダンスの一つさえ……はぁ」
「ご、ごめん……完全に食べ物目当てだったからつい」
「いやいい、期待したオレがバカだった」
「うわミストレひっどいんだけど」
「いいよ、――全部オレに任せて」
「ひゃっ!?」


ダンスの音楽が流れ出すホール内。奥には提督の姿も見える。
さて踊るかという時に実は踊れないというカミングアウトをした私はミストレに勿論怒られた。
でも……踊れない私に呆れつつも、慣れた手つきでダンスを踊るミストレにまた心臓が高鳴る。
真正面のこんなに近く、―――そういえばこんなに近くにミストレの顔があったのはあの壁ドン以来だっけ。
あの時はこんなヤツにこんな気持ちを抱くなんて思っていなかったのだ。
エスカに対するものとも違う、バダップに対するものとも違う。


「ナマエ?」
「ミストレってさ、……私のこと好きだったの?」
「正直なんで気がつかないんだよこの鈍感って心の中で何回も罵った」
「うわごめん!本当そういうつもりじゃなかったんだよ!だってミストレ女の子いっぱいはべらせてるから」
「オレ結構一途なんだよ?ナマエ好きになってからは誰とも付き合ったりしてない」


この鈍感バカ、と憎まれ口を叩かれるけど気にならない。だってミストレの顔は真っ赤だ


「ミストレって可愛いとこあるよね」
「うっさい。てか、君もちゃんと言えよ」
「へ?何を?」
「とぼけたって無駄だバカ。正直に――」


好きって言えよ、と耳元で囁かれたから大好きだよ、って返した。
直後大勢の人の前で濃厚なキスをミストレからもらったのだけど、今ではとても幸せな思い出です。