バカップルは爆発してろ



※一応『今惚れたんだからしょうがない』続き


廊下。

「名前、資料落としたぞ」
「……え?あ、嘘?あ、ありがとう」


庭園。

「名前!あなた、噴水に顔突っ込むつもり?」
「……へ?あ、冷たい」
「この季節なんだから寒いに決まってるでしょ?このバカ!」


広間。

「おい名前!今日こそ俺と……」
「…………………」
「な、このオレを無視するたァ名前の癖に生意気な!おいこっち向けって!」


**


「ねえ名前、流石に最近集中力途切れすぎ」
「……………うん」
「あ、駄目だこりゃ」


自分の口から大きな溜め息が漏れるのが分かった。目の前の幼馴染は自分の方を向いているけれども自分を見ていない。
こりゃ名前に任せきってる事務関連の仕事も穴だらけだろうと容易に予想出来た。ボーッとしたままの名前から無理矢理データ資料を奪い取って目を通す。――あれ?


「名前!」
「っ、はい!ごめんなさい聞いてませんでした、今回はどこが――」
「どうしたの、今日のは全部完璧……」
「え、ほんと!?」


目を輝かせて立ち上がる名前。ぴょんぴょんと飛び跳ねる彼女を横目に再びしっかりと目を通した。しかし数値は全てぴったりと一致。先程の放心状態からは想像がつかない。
そういえば以前はこんなに笑顔で飛び跳ねるなんて事はなかったし、一体どうしたと――あ、


「邪魔するぜ、SARU」
「ザナークさん!聞いてください私サリューに初めて褒められた!」
「うわ何でお前がここに…!?おいバカ飛びつくな!」
「う、うわあああああごめんなさい調子に乗っちゃってごめんなさい!」
「違、そういうつもりじゃねえよ!ああもうホラ来い!」
「………い、いいんですか?」
「さっさとしろっての、バカ」
「………へへ」
「……フッ」


そのまま抱き合うリア充二名(片や幼馴染)。


―――――爆発しろ、むしろさせてやろうか


机の上に置いてあったアンプルシューターを手に取って、とりあえず名前ではなくザナーク・アバロニクに向けた。シューター独特のセッティング音がかちりと響く。


「さ、さささサリュー!?何してるの!?」
「何ってリア充を爆発させてやろうかと」


むちゃくちゃイラつくんだよなーと笑顔を見せると、その音で二人の世界から脱出したらしい名前が慌てて手を押さえ込んできたので渋々シューターから手を離す。チッ
じろりとザナークを睨みつけた。すると返ってきたのは余裕の強いにやりとした笑み。
ああ気に食わない。何で名前はこんな奴を選んだの?僕の気持ちは無視?


「バカップルはギリスとメイアだけで十分なんだけど」
「悪かったな。ま、こいつが予想以上に積極的で驚いたぜ?『オニーサン』」
「やめろザナーク・アバロニク。撃つぞ」
「サリューってばちょ、ストップ!」


こんなヤツに負けたくないので、とりあえず自分も笑顔を顔に貼り付ける。しかし本気。こんなヤツに『お兄さん』なんて呼ばれてたまるか。寒気がする!僕がドジで不器用なだけに人一倍心配させる幼馴染を妹のように思っている、ということは周囲に知られている。なんとなく分かってはいたが、こんな場でこの男に口に出されると本気でムカつく


「僕は二人の関係を認めたわけじゃないからね?」
「お前に認めて貰えなくとも奪っていくまでだ」
「ざ、ザナークさん……!」
「お前はオレのモンだろ、そんなとこに居ねえでこっち来い」


僕の目の前で顔を真っ赤にした名前が、ぱたぱたとザナークの元に駆け寄る。いつからそんな女らしい顔するようになったんだ名前は!そんな顔その男に見せたら襲われるぞ!
ああもうイライラするなあ、サッカーボールはどこだ―――と、その瞬間。


「ふむ―――っ!?」
「―――……は、やっぱ最高」
「な゛っ……!」


目の前で思いっきり濃厚なキスを交わしたザナークと名前に、頭が真っ白になる。ギリスとメイアでさえ公共の場ではそんな事はしない。イチャつきはするが。
長年付き合ってきた幼馴染のキスシーンなんてそりゃもう衝撃なんてもんじゃない。
がちゃん、とアンプルシューターが手から滑り落ちて床に転がった。

――――そんな俺に、とどめの一撃。


「ザナークさん!こ、こんなとこでしないで?……部屋がいい」
「―――だってよ、SARU?」


にやり。

不敵に笑ったザナークと、自分の発言の意味に気がついてわたわたと慌てる名前。自分の中で何かがぷつりと途切れる音がした。もう多分遠慮は要らないと思うから本気で行こう。



バカップルは爆発してろ

(来い!超魔神エヴァース!)
(さ、さささサリュー!?ストップストップ!)
(一体何の騒ぎ?ってSARU、何してるの!?)
(メイア、一体どうしたんだいSARUは―――)

(もうバカップルは全員まとめて爆発しろ!)
(―――モータルスマッシュ!)


(2013/02/22)


ギリメイちゃんごめんよ巻き込んで……
そしてSARU君の一人称間違えてたのできちんと修正しました