悪魔の口づけ

「へ、変態!近寄らないで触らないで!」
「うるせェよ人間。さっさと服脱いで着替えろ」


ここはデモンズゲート。
魔界軍団Zが主に使用している洞穴の中に響き渡る声が普段と違う空気を醸し出す。
私は何故だか知らないが、朝練の準備をしていたら突如現れたデスタに気絶させられ連れ去られたのか気が付いたらここにいた。
魔王の花嫁だか生贄だかのトラブルで、彼らとイナズマジャパンが衝突したのは記憶に新しい。っていうか封印されたんじゃなかったのか
そして現在、私は貞操の危機に陥っている。何やら先日春奈ちゃんが着ていたものとはまた別の服に強制的に着替えさせられようとしているわけである。
狭い小部屋の中でひたすら追いかけっこを繰り返す私とデスタ。あ、捕まった!?


「うわああああ服引っ張るな!やめて!?……っ、きゃああああああああああ!?」
「ちょっと胸に手が当たっただけだろ、気にすんな減るもんじゃねえ」
「減る!乙女の純情的な何かが減る!」
「意味分かんねえよ」
「意味が分かんないのはこっちよ!私魔王の生贄でもなんでもないのに何で連れて来たの!?」


胸まで触られてショックで涙目になりながら叫ぶ。最悪だいやこれは事故だ
事故だけどなんかもう変な声とか出そうになった自分が嫌だ。
精一杯気力を振り絞ってデスタを睨む。あ、笑ってやがるこの悪魔


「ンなモン決まってンだろ」
「………ッ!?」


どさり。にやりと不敵な笑みを浮かべた悪魔に気がつけば押し倒されていた。
近くで見上げるともう女の子みたいな整ったお顔。悪魔のくせに綺麗とか思ってない。
そのままどんどん顔を近づけられるので必死に顔を逸らす。ファーストキスは守らねば…!


「―――お前に惚れたからに決まってンだろ」
「……………はいィ!?」


思わずデスタの顔を正面から見上げてしまえば、あっけなくファーストキスは奪われてしまった。泣きたい




魔の口づけ

(お前は今日、これで俺と結婚するンだよ)
(はぁ!?い、嫌ですお断りです)
(真っ赤な顔して可愛いな、オマエ)
(うわああああまたキスするつも)

(もう逃げらンねェよ?)



(2012/12/20)