怖がりな私を、どうか受け入れて


「剣城くん、おはよう!」
「……………」

「剣城くん、音楽室まで一緒に行っていい?」
「……他を当たってくれ」

「剣城くん、資料運び手伝おうか!」
「別に手伝わなくてもいい」

「剣城くん、今日こそ一緒に帰ろうよ!」
「部活があるから無理だって、何回も言ってるだろ」

「剣城くん、その」
「面倒だ。話しかけるな」



今日もダメ。昨日もダメ。先週も、その前も、先月も、その前もダメ。
剣城京介に一目惚れをしてから、積極的にアピールしている自信はあった。自分を磨いているつもりも、(一応は)ある。校則に違反しないように、綺麗に制服を着ている自信がある。髪だって丁寧に手入れをして、サラサラツヤツヤを保っている。出来る限りをしているつもりはある。

しかし何故だろう、何度帰ろうと誘っても、何度話しかけても、何度行動を共にしようとしても剣城君は首を縦に振ってくれない。女子が苦手かと思いきやそんなことはないみたいだし、男の子の友達もそこそこいる。挨拶だって、私以外には返している。

ううん、やっぱり嫌われてるのかなあ。でも私は剣城君が好きだから、剣城君に私を好きになってもらいたいんだよね。常にしかめっ面を私に向ける剣城君の顔を脳裏に思い描くと、ゆっくりと彼はサッカーをしているときの楽しそうな表情へと変化する。放課後、居残りを終えて帰ろうとしたとき、見下ろしたグラウンドで剣城君を見たあの日。笑顔で松風君達とサッカーをするあの表情。あの表情に似たものを、こちらに向けて欲しいと思っているから頑張っているのに。

諦めるという選択肢が無いにしても、やっぱり悔しさで心は支配されてる。こうして放課後、そっとグラウンドを見下ろしてサッカー部が活動をしているのを見下ろすたびに心臓は握りつぶされそうになる。明日こそ、明日こそ。きっと根気よく話しかけていれば、いつか剣城君だって折れて、一度くらい私にチャンスをくれるだろうという魂胆だ。明日こそ、明日こそ。焦ったって何もいいことはないよ。頑張れ、私。


**


「剣城くん、おはよう!」
「……………」

「剣城くん、さっきの小テストどうだった?」
「………別に」

「剣城くん、理科室まで一緒に行こうよ!」
「断る」

「剣城くん、剣城くーん!」
「用は?」
「ああ、ええっと………特には」
「……なら話しかけるな」


すたすたすた。目の前を横切って、疎ましそうな目を一瞬だけ、私に向けて剣城君は歩いていく。
やっぱり今日もダメらしい。ううん、どうしたものだろう。うざい、と言い放つのを必死で堪えている目線はそこそこにダメージが大きかったけれど、これぐらいで戦闘不能になっているのであれば今日も剣城君に付きまとったりしていない。(そもそも付き纏っていると言っても、必要以上に踏み込まないようにしている。無理強いをして拒絶されたら、流石にダメージが大きすぎる)

……おかしいなあ、剣城君は遠目から見ているだけじゃ絶対にこっちに気がつかないだろうし、些細なアピールじゃあ気がついてくれないだろうと思ったからこそ積極的になろうと必死なのに。全部から回っている気がする。

流石に三ヶ月目ともなると多少は焦りを感じるもので、どうすれば現状を改善出来るのか頭をひねりながら階段を登っていると剣城君の声がした。途端に心臓が跳ねて顔がニヤつく。やっぱり剣城君は好きだなあ。好きになって貰いたいな!1段飛ばしで階段を駆け上ると、踊り場で剣城君は誰かと話していた。随分と優しい声だ。私に向ける刺のあるものとは違う。

よくよく目を凝らすと、それはサッカー部のマネージャーで、隣のクラスの空野さんだった。ショートカットの髪が吹き抜ける風にふわふわと揺れる。会話の内容は多分、今度みんなで遊びに行こう、といったようなものだった。サッカー部の一年生は皆仲が良いみたいだ。平和でいいことだと思う。

剣城君は笑顔で、空野さんも笑顔だった。多分、私が出ていったら疎まれそうだと思って階段をゆっくりと降りていくことにする。別に、上の階に上るための階段は他にもあるのだから問題はない。ああ、でも、空野さんかあ……影で支えるタイプ、なのかな。目がぱっちりしていて、ナチュラルな可愛らしさがある。もしかして、剣城君の好みはぐいぐい迫るタイプではなくて、適度に会話を弾ませることが出来る女の子だったりするのかもしれない。


**


思い切って週末に髪を切った。重みを失った頭は不安定で、どうにも心が落ち着かない。勢いだけで美容院に飛び込んだはいいものの、本当にこれでいいのか不安になってきてしまった。空野さんほど短い髪ではないけれど……そこそこに短くなった髪の毛先をいじる。朝、剣城くんに会うために私は教室の前の廊下でいつも待ち伏せをしているけれど流石に今日はそんな気分になれなかった。別に教室の中にいても、声は掛けられる…はずだ。

そっと喉元に触れる。いつも通り、いつも通りだ。いつも通りのはずなのだ。なのに頭はこんがらがっていて、剣城君にどうやって話しかけていたっけ、なんて考えてしまう。周囲のささやき声と視線が私の髪に集中しているなんて知らぬまま、剣城君にどうおはようを告げるか、私の頭の中はそれでいっぱいになってしまった。やがて部活の朝練を終えた剣城君が教室に入ってきても、即座には反応が出来ないぐらいには混乱していた。

剣城君が自分の席に着くためには、必ず私の席の前を通る。目線を確かに感じながら顔を上げると、不可解なものを見るような(決して好意的とは言えない、むしろどこか不機嫌そうな)剣城君の顔があった。「…お、はよう」「……」絞り出した声は非常に小さくなってしまって、それも彼の不愉快を煽ったらしい。目線はすぐに逸らされた。目の前をすたすたと歩き去っていく剣城君はいつも通りだ。

ずるいなあ、と思ってしまう。剣城君が好きで、いつも通りじゃなくなっているのに…彼は私に好かれていることを自覚しているはずなのに、私に何も言ってくれない。話しかけるなとは言えど、もう二度と近寄るなとは言わない。面倒だと言えど、迷惑だとは言わない。疎ましそうにこちらを見るけれど、さっさと歩いていってしまうだけで私を振り払ったりすることはない。ああ、思い返してみると分かるけれど、本当に剣城君はずるいなあ。確かに好きですの安売りをしたくないせいで直接人前で大声で好きだと言ったことはないけれど、あからさまに"好き"を表現している私を空中で泳がせている。気がついてないなんてことは有り得ない。

ああ、どうしよう…次に何をしなきゃいけないんだっけ。私は何をしたかったんだっけ。思い出せない。それにさっきの挨拶だって最悪だ…普段だったら笑顔でおはよう剣城くん、って言えたのに。
髪をいじる指は止まらない。気分は八方塞がりで、どうにかできる気もしない。そのくせ机に突っ伏したとき、頭に浮かんでくるのは空野さんと話していたときの楽しそうな剣城君の顔なのだ。空野さんみたいに、話しているときに剣城君に笑顔になってくれれば私はそれで満足なのに。


**


「で、髪切ったわけ?バカじゃねえの?」
「バカとか言わないでよ、これでも思い切ったんだからさあ」
「………いや、まあ、似合わないってわけじゃないけどさあ……すげえ違和感」
「似合ってないんじゃないのならいいの」
「それで剣城君には?アピールしてんの?」
「ううん、ここ最近は挨拶だけ。今までで考えたら自重してる」
「やっと自分がウザいって学習したんだ」
「うるさい!目指せ空野さんみたいな可愛い女の子!」
「…あーはいはい、名前はもう好きにやればいいよ好きにやれば」


目の前の狩屋が溜息を吐き出して、机に突っ伏した意味を理解出来なかったから、とりあえず狩屋の髪の毛をつまみ上げてみる。くせっ毛のくせに、ふわふわしていて触り心地がいいの、羨ましいな。狩屋のくせに。「…で、相談って何?」狩屋の髪をいじっていると、顔を上げた狩屋が物珍しいものを見るような目で私を見つめながら口を開いた。


「そうだった、私今日相談に来たんだったそうだった」
「名前は俺の机に向かって好きなだけ色々相談すれば」
「ごめんごめん!頼りになるの狩屋しかいないんだって!ほら剣城くんと同じ部活だし仲いいし」
「俺より天馬君達の方が絶対剣城君のこと、分かってると思うけどなあ…」
「狩屋が話しやすいんだって!で、本題なんだけど」
「…なに?」


私の手を振りほどいて、体を起こした狩屋と向き合う。…目を逸らしてしまったのは、こんな風に相談を持ちかけることが初めてだからだ。「まあ、その。…だから最近は剣城くんに挨拶しかしてないんだけど……挨拶以外、どう話しかけてたのか忘れちゃって……うん」本気で悩んでいるせいで、どんどん語尾が小さくなっていくのを自分でも自覚してしまっていた。今まで当たり前に踏み出していた一歩が、少しの恐怖で踏み出せなくなっている。このままだと他の女の子に剣城君が取られそう、なんて考えたりもする。

流石に人のものを奪おうなんて思うことはない。だから、人のものでない限りは全力を尽くしたい。でも、でも…話しかけられなくなってしまってから、色んなタイミングが狂っている。そのせいで焦って、最近は何もかもが空回っている気がしてならない。私以外にもやっぱり色んな女の子が剣城くんを見ているなあと思うし、周囲と自分をすぐに天秤に掛けてしまう。そうして遠目から自分の行動を振り返ったとき、ああ痛いなあ、なんて思ってしまったのが、今剣城くんへの一歩を踏み出せない一番の理由だ。遠目から剣城君の背中を眺めて(勿論、迷惑を掛けているのは承知の上で付きまとっていたけど)申し訳ない気持ちが湧き出してきて止まらない。そうでもなきゃ狩屋に相談なんてしない。


「ねえ、どうやったらまた剣城君に…今度はちょっと控えめに?話しかけられると思う?」
「なんで俺にそんな難しいことを聞くかなあ名前は」
「出来ることなら適度な距離を明確にして、それを少しづつ縮めていくアクションを起こしやすい立ち位置に行きたいなあって思うんだけど」
「すごく面倒くさいからそのまま嫌われればいいと思うんだけど」
「……あー、それはもう手遅れかな……?」
「うっわ地雷になってんじゃねえよ!何だよ、この間まで突撃あるのみとか言ってただろ!」
「やばい狩屋、泣きそう。涙出そう」
「誰かに見られたらまたこじれるだろ!やめろよ!ああ俺ティッシュ持ってたっけ…」


鞄から使いかけのポケットティッシュを取り出した狩屋がそれを私の顔に押しつけた。ありがたく一枚抜き去り鼻をかんでおく。「で、剣城くんは私のこと何か言ってたりする?」「別に何も。…あー、でも昨日は珍しく調子悪かったな。昨日は何日目?」「話しかけられなくなって?確か三日目だけど、それ絶対私関係ないよ」自信を持って言うことではないのだが、そこは断言出来てしまうのが悲しいところだ。「だよなあ…」狩屋もやっぱり同意見らしい。切ないかもしれないがこれが現実である。

「まあ、現状はどうしようもないんじゃないかな」狩屋が指先で髪の毛をいじりながら呟いた。「……かなあ」頷いて、ぼんやりと明日のことを考える。おはようって言って、確か明日は理科室への移動教室があったからそのときに上手く声を掛けて…「うん、なんとか頑張ってみる」頷いた私に狩屋はふうんと鼻を鳴らすだけだったけれど、それでも狩屋の癖に目線は優しいから困る。


「まあ、せいぜい頑張れば?…話ぐらいならいつでも聞いてやるから」
「優しいねー、狩屋は丸くなったねー」
「うるさい!」


茶化された狩屋がいくら怒ったふりをしていようが、狩屋が優しい事実は変わらないから笑ってしまう。「ありがとう、元気出たよ」「なら良かったんじゃない」相変わらずツンケンしているけれど、狩屋はいいやつだと心の底から思う。


**


「おはよう、剣城くん」
「………」


狩屋に相談を持ちかけてから数日。心情を吐露したことで心が軽くなったおかげか、ここ最近は(以前ほどではないけれど)剣城くんに話しかけられている。まだ勇気が出ないせいで廊下には立てないけど、それを狩屋に相談すると別にいいんじゃない、と肩をすくめられたからこのまま、教室の中で剣城くんが私の机の前を通り過ぎるのを待っている。そうすることで気がついたのは、案外、剣城くんが私の机の前を通り過ぎる頻度は高いということだった。廊下側で、入口に近い位置にあるせいかもしれないけど。

進展があったかと言えばそれはない。なんとなく目線が疎ましいと言わんばかりのものから、なんなんだコイツ、といった訝しげな目線になったぐらいだ。焦って動かない方が良かったのかな、と思っても今更としか言えないので悔やもうが何をしようが変わらない。

そういえば剣城君は、最近サッカーの調子が悪いみたいだ。シュートがゴールポストに跳ね返ったり、ラインの外側へ飛んでいったり。俺は絶好調だけど、と得意気な顔をする狩屋は、サッカー棟を覗き込んでいた私に一番に気がついてくれた。一瞬、剣城君と目が合った気がしたけれど狩屋の方へと意識を向ける。


「案外、名前がこうして俺と喋ってるのが気になってたりするんじゃない?」
「いやいやいや、それは無いと思うよ。だって私あんなに嫌そうな顔されてたのに」
「でも俺、さっき剣城君に名前のこと聞かれたけど」
「えっ!?ほ、本当!?なん、なんて!?」
「さあなー?」


狩屋は意地の悪い顔で笑って、そのまま部活に戻っていった。残された私は酷く驚いて、そのまましばらくボールを追いかける剣城君の後ろ姿を呆然とただ、眺めていた。剣城君が、私を、気にかけた…?こういった場面では、狩屋は嘘を吐かないと思っている。狩屋が剣城君に何を聞かれたのかは分からないし、それが良い事なのか、悪いことなのかも分からない。
それでもどんな形であれ、剣城君が私のことを気にしたという狩屋の言葉は今すぐ死んでしまいそうなぐらいには嬉しかった。ああ、心臓が破裂してしまいそうだ!私はまだ、剣城君のことを懲りずに追いかけてもいいのかもしれない。


**


また、色んなことが空回るようになった。剣城君の顔が見れなくなった。私の何を狩屋に聞いたんだろうとか、今剣城君との距離はどれぐらいなんだろうかとか、考え始めたら頭がぐるぐる回って平衡感覚を失いそうになる。おかげでここ数日は傍目からも多分あからさまなぐらいに、剣城君を避けてしまっていた。自己嫌悪も凄まじい。

狩屋に相談しようとも思うのだが、もうすぐ雷門イレブンには大事な試合が迫っているらしい。狩屋本人にもピリピリとした独特の雰囲気が漂っていて、そのせいで中々近寄り難いのだ。剣城君は、相変わらず不調らしい。そのせいで苛立っているのかもしれないけれど、よく私を睨んでいる気がする。邪魔をしそうだと思われているのかもしれない。



「……もうダメだねえ、こんなんじゃ」


見下ろすグラウンドで動く人影の中に、剣城君の姿は見当たらない。そうだろう、彼は今日の日直で、授業に使った辞書を図書室に返しておいてくれと先生にホームルームで告げられていた。以前なら何も考えずに手伝おうか、って言えてたのにね。言えなかったね。
黒板はまだ文字で埋まっている。これを消すのは剣城君の仕事だ。だから自分が満足するために、私は剣城君から仕事を取り上げることにした。ベランダから教室の中へ戻る。

黒板消しを手に取ると、うっすら白い粉がまみれていた。腕を伸ばして、板を埋め尽くす先生の几帳面な文字を消していく。こんなに虚しくて、悔しくて、寂しくて、何も出来ない自分を恨むぐらいなら恋なんてするもんじゃかったと、心の底からそう思う。


―――消せればいいのに。この、ぐちゃぐちゃになってしまった感情も。


黒板消しを二つ手に嵌めて、ベランダに出て白い粉をはたく。風に乗って独特のにおいと一緒に、どこかへ飛んでいくチョークの粉。あれはきっと、一番剣城君に振り向いて欲しかった時の私だ。あの怖いもの知らずで、純粋に恋をしていた私はもういない。

教室に戻り、黒板消しを最初とまったく同じ位置に戻す。朝来た時の綺麗な黒板を見つめながら、まだ数センチしか伸びていない髪に触れた。勢いだけで捨ててしまった私の髪は、きっと自信そのものだったんだろう。「…ああもう、ダメだダメだ!」首をぶんぶんと振って、床に置いていた鞄に手を伸ばした。…――瞬間、がらがら、と音を立てて扉が開くのを視界の隅に捉えてしまう。


「……苗字?」
「っ、」


――聞き覚えのある声だった。ずっと、呼ばれたいと思っていた声だ。

ぞわりと背筋が粟立って、足がかたかたと震えた。顔を上げることが出来ない。最初は本当に、嫌われているのなら自分の行動で好きになって貰えばいい、なんて思っていたのだ。そのくせ疎まれるのは怖くて怖くて、私は、


「……もう、やらない」
「何を」
「迷惑だと思われないようにする。煩くしないようにする。だから、その…」
「………」
「調子悪いの、早く治るといいね。今度の試合、頑張ってね」
「…苗字」
「さよなら!」


鞄を引っ掴んで、剣城君が入ってきたのとは別の入口から飛び出した。頭がくらくらして顔が熱い。廊下を駆け抜けて、上履きを鳴らしながら階段を下りる。逃げたい。逃げてしまいたい。でも言いたいことは言った!頑張った、頑張ったよ私。頑張っ――


「待てっ、て…!」


掴まれた腕から熱が伝わる。嘘だ、とか夢だ、とか、頭の中で私の声が響く。振り返るのが怖くて怖くて、同時に一瞬で湧き上がった期待に心臓が破裂してしまいそうだ。「……な、んで」剣城君が、少しだけ息を切らしている。それから、目が怖くない。なんで疎ましく思っていた私を、そんなに急いで追いかけてきたの?ねえ、どうして。私は取り返しのつかないところまで嫌われたんじゃなかったの。

目を合わせるのが怖くて顔を上げられない。どうしたらいいの、どうすればいいの、何をすればいいのか分からないよ!腕を振り払おうとしても、剣城君は離してくれる気配はない。どうしよう、どうしよう…!沈黙のせいで全身を恐怖が支配していくみたいだ。がたがたと震えだした足を止めることが出来ない。

随分と長い時間、腕を掴まれていた気がした。きっとこれは数十秒の出来事なのに、十分二十分の感覚だ。やがて緩やかに抜けた力に促されるまま、腕がだらりと垂れてスカートに触れた。「……好きだ」――瞬間、囁かれた言葉をきっと私は一生忘れることはないだろう。


怖がりな私を、どうか受け入れて



(2014/11/14)

王道少女漫画の逆みたいなのを書きたかった結果すごくグダグダした 反省
私に王道ものを書くのは向いていない気がしました 実感しました
剣城に付きまとう女の子が自分の行動に疑問を抱いた瞬間普段の行動が取れなくなって、
その間付き纏われなかった剣城がモヤつくみたいに したかっただけだった

狩屋はすごく友達にしたら親身になってくれそうって思いながら書きました
以下おまけ




「…狩屋」
「なに、どうしたの剣城君」
「苗字はどうして髪を切った?」
「ああ、自分が振ったわけでもないのにってことか」
「………」
「何も言わないってことはちゃんと名前に好かれてる自覚あるんだ。安心したよ」


「まあでも女の子が髪を切るってことは、それなりに名前はショックを受けたんじゃない?」
「ショック…?」
「剣城君には分からないかもね。ほら、結構タフだけど名前は一回ヒビが入ったら弱いみたいだし。剣城君に好きになってもらうのを諦めたとか」
「…よく知ってるんだな」
「推測だから、全部信じない方がいいと思うけど?」


「俺としては剣城君の反応は正しいと思う。あいつ、うざかっただろ」
「……」
「でも今は騒がしくなくなって逆に寂しいんだ?」
「そんなことはない」
「随分邪険にしてたくせに」

「…やけに苗字の肩を持つんだな」
「そりゃあ毎日毎日……なんでもない」
「毎日?」
「(相談受けてるって言いかけたけど、剣城君が誤解してたら面白いしこのままにしとこう)」
「毎日なんだ、狩屋」
「気になるんなら名前に直接聞けば?じゃあまた後で!」