NON

数ヶ月が経った。
特に変わったこともなく、一日一日を過ごし、冬が来た。


「どうしたんだい、このパスポート」


机の上に置かれたパスポートを手に取り、露伴が名前に聞いた。
中を見れば、名前の顔写真が載っている。


「言ってなかったっけ?今年の冬は承太郎のとこに行くの」

「はぁ!?聞いてないぞ!」

「行くから」

「今言うな!そんな急に…」


露伴としては、名前と過ごす初めての年末である。
とびっきり甘い夜を過ごそうと思っていたのに。思うだけはタダだ。
確か名前と露伴は恋人同士だったはずだ。
なのにこの恋人は違う男(お父さん)と過ごすと言うのか。


「ふ…そうかい、君にとってぼくなんてそんなもんなのか…。いいさ、せいぜい楽しい年末を過ごしてきなよ…」

「何言ってんの?露伴も行くんだよ?」

「え?」

「ちなみに明後日出発だからね」


早いな!と一応ツッコミは入れるが、笑顔を押さえ切れない露伴だった。


***


 
空港に着いた途端、嫌な顔が見えた。
何だよ、結局はこうなるのか…。
露伴は分かりやすくため息を吐いた。


「なんスかそのため息。居ちゃ悪いんスかぁ?」

「悪い。今すぐ帰ってくれたらうれしいんだがね」

「駄目だよ露伴。私が誘ったんだから」

「康一くんならまだしも、何でクソったれの仗助とアホの億泰とプッツン由花子まで居るんだ!」


アホって!と億泰がショックを受けていた。
由花子はぞわりと髪の毛を動かしたが、康一の制止によって露伴の命は助かった。
せっかく名前と二人きりで旅ができると思っていたのに。


「だって大勢の方が楽しいじゃん」

「ぼくは二人が良かった…」

「まぁまぁ、旅は道連れって言うでしょ」

「名前さん、露伴先生の口説きに動じてない…」


動じてないのではなく、ただ気付かないだけである。
露伴も無意識に言っているので、特に支障はないのだ。
かくして6人は同じ飛行機に乗り、日本を飛び立った。



まだ浮遊感のある足を地につけ、名前たち一行は異国の地へと降り立った。
予め全員が露伴に英語を喋れるようにしてもらっている。空港の外に出ると、見覚えのある顔があった。


「承太郎ー!!」

「よく来たな、名前」

「会いたかった!」


顔を見るなり承太郎に抱き付く名前。
それを抱きとめる承太郎。
それは恋人同士というより、親子のようであったが、面白く思わない人物が若干二名。


「承太郎さん…いいから早くホテルに案内してくれませんかね。長旅で疲れてるんですよ」

「あぁ、そうだな。着いて来い」


露伴の指すような視線に一切動じず、承太郎は案内をする。
着いたホテルに荷物を置き、一行は街に出た。
今から街を散策し、年明けを待つ。
という計画だったのだが。


「名前、行くぞ」

「え?何?」


露伴は名前の手を取ると、承太郎たちと反対方向に走り出した。


「なっ、テメー露伴!?」

「じゃあな!まぁ明日には帰るさ」

「ちょ、露伴!どこいくの!?」

「あいつらが居ないとこだ」


手をつないだまま、二人は走り続けた。
 

「信じらんねぇ!行かせてたまるかよ!」

「俺のハイウェイ・スターで追うか!」

「うぉお!?テメ、裕也!?何で居るんだよ!」

「お前らだけ外国で年明けるとかズルイんだよ!」


だからと言って着いて来るだろうか。
完全にストーカーと化した噴上に、承太郎がため息を吐いた。


「いい…追わなくて」

「えー!心配じゃねぇのかよ、お父さん」

「誰がお父さんだ」


とか言いつつ、名前が行ってしまった方向を寂しそうに見つめる承太郎は、巣立つ娘を見る父親の目だ。
そんなやり取りを見て、康一は苦笑する。


「まぁ、ぼくも追わない方がいいと思うよ」

「じゃあ康一くん、私達も行きましょう」

「何だよ…結局こうなんのかよぉー…」

「男四人で年明けを過ごすのか…」

「楽しそうでいいじゃんかよぉ」

「お前はいつも楽しそうでいいな…」


笑う億泰にため息を吐き、二人が消えた方向を見つめた。


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