★★★★ |
NON リビングの机の上は大変な状況になっていた。 求人情報誌と思われる雑誌が散乱し、それを見つめながら名前が唸っていた。 「ここは家から遠いし…ここは近いけど時給安いし…」 パラパラとめくっているページには、アルバイト情報が載っている。 ようやくバイトをする気になったらしい。 「あ!ここ近いし時給900円!」 「高校生禁止だとさ」 「ホントだ…って、露伴、いきなり声かけんな!」 「なにバイトなんか探してんだよ」 いつの間にか後ろに居た露伴にビックリしつつ、名前はページをめくり続ける。 そりゃあ、身内でも何でもない露伴に置いてもらっているのだから、少しでもお金を入れておかないと、名前の気が済まない。 「そんな足しにもならないな」 「いいじゃん!さすがにただで置いてもらうのは気が引けるしさぁ」 「別にいいって言ってるだろ」 君を食わしていくぐらいの金なら、余りあるんだ。と露伴が言う。 それ、プロポーズですよ、露伴先生。 しかしどっちも気づかないので甘い空気なんて流れない。 「それにだな…」 「何?」 「バイトなんかすると、家に居る時間がなくなるだろ…」 蟻が鳴くような声で露伴が言う。 恥ずかしさを必死に我慢したのは分かるが、それでは聞こえないぞ。 案の定名前には聞こえなかったみたいで、名前はキョトンと露伴を見た。 「何?もうちょっと大きい声で言ってよ」 「う、うるさい!言うか馬鹿!聞こえなかったのが悪い!」 「えぇ!?」 彼らが甘い空気を出せるのはいつになるのか。 それは誰にも分からないのだった。 前 | 戻 | 次 |
☆★ ★ ★ ★ |