NON

リビングの机の上は大変な状況になっていた。
求人情報誌と思われる雑誌が散乱し、それを見つめながら名前が唸っていた。

「ここは家から遠いし…ここは近いけど時給安いし…」


パラパラとめくっているページには、アルバイト情報が載っている。
ようやくバイトをする気になったらしい。

「あ!ここ近いし時給900円!」

「高校生禁止だとさ」

「ホントだ…って、露伴、いきなり声かけんな!」

「なにバイトなんか探してんだよ」


いつの間にか後ろに居た露伴にビックリしつつ、名前はページをめくり続ける。
そりゃあ、身内でも何でもない露伴に置いてもらっているのだから、少しでもお金を入れておかないと、名前の気が済まない。


「そんな足しにもならないな」

「いいじゃん!さすがにただで置いてもらうのは気が引けるしさぁ」

「別にいいって言ってるだろ」


君を食わしていくぐらいの金なら、余りあるんだ。と露伴が言う。
それ、プロポーズですよ、露伴先生。
しかしどっちも気づかないので甘い空気なんて流れない。


「それにだな…」

「何?」

「バイトなんかすると、家に居る時間がなくなるだろ…」


蟻が鳴くような声で露伴が言う。
恥ずかしさを必死に我慢したのは分かるが、それでは聞こえないぞ。
案の定名前には聞こえなかったみたいで、名前はキョトンと露伴を見た。


「何?もうちょっと大きい声で言ってよ」

「う、うるさい!言うか馬鹿!聞こえなかったのが悪い!」

「えぇ!?」


彼らが甘い空気を出せるのはいつになるのか。
それは誰にも分からないのだった。


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