NON

十分に研究材料も揃った。
承太郎は叔父へと電話をかけた。


「承太郎さん、帰っちゃうんスか?」

「ああ。明日の朝出る」

「そうっスか…」


しょんぼりしている叔父が安易に想像できて、承太郎は苦笑する。
そういえば、と承太郎は思い出した。


「仗助…悪かったな」

「は?何がっスか?」

「いや。あまり露伴と喧嘩するなよ」


えー無理っスよ、根本的に性格が合わないんだ、と仗助が嘆いた。
こればかりは、承太郎の言うことでも聞けない。
いつか露伴と名前の関係に気づいてショックを受ける仗助が浮かんだ。
承太郎はもう一度「悪かったな」と言って電話を切った。

次の日。
買い物から帰る途中だった名前と露伴に会った仗助は、承太郎が今日帰ることを伝えた。


「え〜承太郎帰っちゃうの?寂しいなぁ」
「空港まで見送りに行くけど、名前も行くか?」

「行く!行ってもいいよね?露伴」

「ああ。…ぼくも行く」


来なくていいのに、と仗助が呟くと、露伴がギロリと睨んだ。
出発の時間、あれよあれよと人が増え、何故かみんなで承太郎の見送りに来ていた。
その大人数にビックリしながらも、やれやれ、と苦笑した。


「承太郎〜また来てね?絶対来てね。次はジョセフも連れてきて」

「お前が遊びに来ればいい」

「じゃあ行く!」


長期休業中に行こうと名前は決心した。
じゃあ俺も!だったら俺も!じゃあ僕も行こうかなぁ。康一くんが行くなら私も!
若干名目的は違う気がするが、騒がしくなりそうだ。
承太郎は最後に名乗りを上げなかった露伴に言葉を残し、飛行機に乗り込むことにした。


「露伴、名前を大切にな」

「…分かってます」

「じゃあな名前、露伴に泣かされたらすぐに連絡してこい」


きっと海を飛び越えてオラオラしにくるに違いない。
名前は大きく手を振りながら、すっかりお父さんと化した承太郎を見送った。



どうもおかしい。
仗助は承太郎と露伴のやりとりを思い出しながら唸った。
あれはどう考えても、娘が貰われていく父親のセリフである。
それになんだか、名前の態度がいつもと違う気がする。
あまり考えるのが好きではない仗助は、直接名前に聞くことにする。


「なぁ名前、お前露伴と何かあった…?」

「え!?何かって何!?何もない、よ」

「ぜってー何かあっただろ!」


本当に彼女は隠し事ができない。
目は泳ぎ、顔を赤くしながら慌てて否定している様は、何かありました!と主張しているようなものだ。
その様子を見ていた露伴は、勝ち誇った笑みを浮かべる。もちろん仗助に向かってである。


「フン。名前、帰るぞ」

「う、うん」

「おい!…つーかその手は何だよ!」


仗助は仲良く繋がれている二人の手を指差した。
悪い予感が段々と現実になってくる。


「何って、恋人同士が手を繋ぐことが何かおかしいか?」


フフン、と露伴が仗助を鼻で笑う。
名前を手に入れて完全に天狗である。
一方仗助は、そんな露伴にムカつくより先に、ショックが襲ってきたようで、空港中に声を響きわたらせた。


「マジ!?嘘だ!嘘だと言えよ名前ー!」

「え?やっぱり私身をひいた方が…」

「どんな勘違いだ。いい加減その考えは捨てろよ…」

「…無理か も」


仗助に肩を揺さぶられながら、名前は笑った。
何だかその笑顔が幸せそうで、仗助はついに何も言えなくなった。
この思いは胸に仕舞っておこう。伝わることの無いように。
でも露伴、名前を泣かしたら…、と仗助は自分の甥と同じことを考えていた。きっとドラララされるに違いない。


前 | | 次

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -