NON

居るはずのない一人の少女が存在した。
何の変哲もない、特に特技もない、ただの女の子。
しかし彼女が与えるものは大きく、居るはずのない少女は居なくてはいけない少女になっていた。


「名前!探したんだぞ!ドアぐらい閉めていけ!」

「やっぱり怒ってたな」

「カルシウム不足だから」

「ならヒトデを食べると良い」

「ヒトデでカルシウム摂取できるの!?」


そもそもヒトデが食べられるかどうかは知らない。
あんなことがあった後なのに、酷く落ち着いている名前を見て、露伴は不思議に思った。
それになんだか承太郎と仲良さそうだ。
もう承太郎の前だから、だなんて言ってられない。こっちだって必死なんだ。
露伴は名前の腕を掴むと、自分の胸に抱いた。


「露伴?」

「…」

「…俺は邪魔なようだな」

「分かってるんなら早くあっちに行ってくださいよ」

「えー承太郎帰っちゃうの?」

「…20までは手を出すなよ」

「っわ、分かりましたから…!」

「後、泣かせたら…」


承太郎はそこで止めて去っていったが、きっと泣かせたらオラオラされるに違いない。
なんだか名前の父親みたいだ、と露伴は思った。少し前に自分もそう形容されたのはすでに忘れている。
承太郎が居なくなってしばらく沈黙が続き、それを破ったのは名前だった。


「私、承太郎が好き」

「…は?」

「仗助も好き」

「…(一瞬手遅れかと思った)」

「億泰も康一くんも由花子も好き」

「何が言いたいんだ?」


名前が言いたいことは、大体理解した。
だけど、名前の口から聞きたかったので、露伴は続きを促す。
だんだんと顔を染めていく名前につられて、露伴の顔も染まってきた。


「露伴は好きだけど、好きじゃないの」

「意味分からんぞ」

「仗助とかの好きじゃなくて、…愛してる?」


首を傾げながら上目遣いでこう言われては、露伴とて普通に受け止めることはできなかった。
きっと体中の血液が顔に集まっているかのように赤くなり、眩暈がした。
反則っていうのは、こういうことを言うんだ…!
名前も自分を好きだというのを知っていたにも関わらず、この破壊力である。


「し、知ってたさ…バカ!」

「バカ!?てか知ってたの?私でさえさっき知ったのに」

「さっき?」

「承太郎に教えてもらった」


まさか父親に助けられてしまっていたとは。
腕の中で名前が笑う。


「でもまさか露伴に告白されるとは思わなかったぁ。あの露伴に!」

「ぼくだってこんな奴に惚れるとは思わなかったさ…人生最大の失敗だな」

「ツンデレめ…。もう今日のこと絶対忘れられないよ」


腕を回して抱きついてくる名前を抱きながら、露伴は20まで待てるかな…なんて考えていた。


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