NON

承太郎は露伴の後ろで何かがもぞもぞしているのを見て、ようやくそれが昨日の少女だと気づいた。
承太郎の考えでは仗助が惚れている少女。
純愛派だと言う彼が好きになるような子とは、どういう少女なのだろうか。
昨日はすぐに逃げてしまったのであまり分からなかったが。


「名前か」

「!」

「おい名前、バレてるぜ」

「私は名前ではありません。チープ・トリックです」

「ならあの小道に連れてくぞ。いいから出てこいよ」


やはり出てきたのは昨日の少女だ。
だがこんなにおとなしかっただろうか。
本当に昨日自分をしばきまくった、あの名前か?
承太郎が疑問に思うのも仕方ない。
名前は下を向いたまま承太郎と目を合わせようとしないのだ。


「おい、どうしたんだよ名前…」

「だって承太郎かっこよくて照れる」

「はぁ!?ヒトデ持ってるんだぞ?」

「そんなとこも可愛い」

「ただでかいだけじゃないか…あ、すみません」


見るからに妬いている露伴に、承太郎が気づく。
こいつもか、と承太郎はため息を吐き、昨日の自分の行いを悔いた。
きっと昨日のことでまだ照れているのだ。言えと言ったのは名前なのに。


「やれやれだぜ…」

「あ!生やれやれ!やべーかっこいい!」

「何だと!?どこがだよ!全然かっこよくないね!」

「露伴、さっきから失礼だぞ…」


俺でも少しは傷つくんだぞ。
久しぶりに来た杜王町には一人の少女がいて。
その少女はすでに、かなりの影響力を持っていて。
またいろいろ面倒なことになりそうだ、と承太郎はため息を吐いた。



昨日はいろいろ大変だった。
何故か露伴は不機嫌になるし、承太郎はヒトデをおすそ分けすると言って聞かないし。
ヒトデなんかもらっても、何すればいいんだ。
結局、承太郎が帰った後露伴が思いっきり海に投げ捨てていた。
ヒトデは弧を描き、海にポチャンと落ちていった。
哀れ。承太郎に捕まったばっかりに。あのヒトデもブーメランにされるとは思わなかっただろう。


「でも惜しいことした…」

「何がだ」

「露伴と承太郎が揃うとこなんて、めったに見られないのに!」


また始まったのか、と露伴は一つ嫌な顔をしてそっぽを向いた。
しばらく忘れていたが、私は腐女子である。
しかし最近、何故だか露伴たちをそういう目で見れなくなっていた。


「そういえば露伴って恋してる女の人が居るんだって?」

「…そんなこと誰に聞いた」

「自分で。ぼくだって恋ぐらいするんだいっ!って言ってた」

「微妙に違うが、言ったような気がするな」


ということはやっぱり好きな人が居るのか。
問えば、いる、と言った。
まさか!露伴が恋心を抱いている女の人が居るとは!


「誰!?」

「異性だ」

「うっ、それは分かってるけど…」

「何でそんなに気になるんだよ」


そういえば、何で?
露伴が誰かを好きだと思うと、たまらなくなる。気になって仕方ない。
ああ、なんだっけこの気持ち…。


「君だよ」


「え?」

「ぼくが好きなのは、名前だ」


気づいたら、家の外を走っていた。


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