NON

数学なんか嫌いだ。
私は典型的な文系人間である。
よって、数学なんてものはこの世に存在しなければいい。
仗助や億泰もそういう人間らしく、頼ることはできなさそうだ。
ということで、残るは!


「由花子!数学教えて!」

「名前、0には何をかけても0なのよ」


名前は100のダメージをうけた!
こうかは ばつぐんだ!
なんてアホなこと言っている場合ではない。
由花子は康一くん以外にわざわざ勉強を教えるなんてことしたくないらしい。
なんだよそれ!頭良い奴はもうちょっと悪い人に協力するべきだ!
しかしこれで私の道は閉ざされてしまった。
大人しく家に帰って勉強しよう…。
と思ったのに、後ろから首を絞められ危うく天へと昇るところだった。


「ぐぇっ」

「よ!愛しの裕ちゃんだぜ!名前ー元気ないね。あ、俺に会えなくて寂しかったんだろ」

「あー…アホが来た…」

「アホってなんだよ。名前の愛情表現は厳しいな!」


何だこの脳内春男は…!
いいから離れろ!帰って数学という名の魔王と戦わなければならないんだよ!


「何?名前って数学苦手なんだ」

「悪いかっ!ちなみに理数系全般駄目だよ!」

「俺、数学得意だぜ?教えてやろうか」


なんと!
あの裕ちゃんの口から「数学得意だぜ」だと!?
算数じゃないよ!?


「失礼だな。教えてやんねーぜ」

「嘘!教えて下さい!」

「じゃ、デートして」

「無理!」

「無理って!」


裕ちゃんとデートなんて心臓がいくつあっても足りない。
しかし数学の単位はほしい。
どうするべきか!


結局私が折れ、テストが終わった後一回だけデートすると言う約束で、数学を教わることができる。
私の…初デートが裕ちゃん…。
なんか微妙に嫌だ。(失礼)
近くにある喫茶店に入り、ドリンクバーで粘ることにした。
机の上に教科書を広げ、にらめっこする。


「うーん…早速分からん」

「どれ?ああ、これこっちに代入して、んでこうすれば…」

「うわっ!すごい!マジに裕ちゃん数学得意なんだね!」

「だから言ったろ〜?」


裕ちゃんはスラスラと問題を解く。
すごい!私にはどうみても暗号にしか見えないのに!
ちょっとばかり、裕ちゃんを見直した。
ただのアホなナルシストじゃなかったんだね!


「私、裕ちゃんのことただのアホだと思っててごめん!」

「お、おぅ…?(アホだと思われてたのか…)」

「今日はありがとう裕ちゃん!また数学教えてね」


心で理解できた数学の教科書をしまい、裕ちゃんに微笑んだ。
裕ちゃんはポカンと私の顔を見る。
何で…笑ったつもりだったんだけどなぁ…。


「やっぱ…名前いいわ…」

「はい?」

「つーか、名前いい匂いがする。香水かなんかつけてる?」


クンクンと裕ちゃんが鼻を動かす。
さながら犬のようだ。思わず撫でたい衝動にかられるが、そこは我慢する。


「つけてないよ。シャンプーかなんかの匂いじゃない?」

「いや、…名前の匂いだ」

「うわっ!ちょ…裕ちゃん!」


グイッと手を引っ張られ、首筋に裕ちゃんの顔が埋まる。実にくすぐったい。
てか、ここ喫茶店ですから!


「コラ!離しなさい!」

「やだ」

「ガキかあんたはー!もう、…ほんと恥ずかしいから…」


周りの好奇の目がガンガン背中にぶち当たる。
今にも、最近の若者は…という声が聞こえてきそうだ。
引き剥がそうとしても、所詮男の腕力にこのか弱い私が適うはずなく。
畜生…シュレッダーすら壊せなかったくせに…。


「離さないともうデート行かないからね」

「それは困るぜ。しょうがないな」

「ほんと裕ちゃん、人目気にしてよ…」

「じゃあ人目なかったらしてもいいんだ?」


もう殴ってもいいかなぁ!?
ギロリと裕ちゃんを睨むも、きっと顔が真っ赤なので効果は期待できなさそうだ。


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