NON

帰り際に仗助たちに呼び止められた。


「名前〜カメユー寄って帰らねぇ?」

「ごめん!そんなことしてる場合じゃないのよー」


また来週!と急いで教室を出た。
帰って早速勉強しなければ!
億泰にだけは負けられない!(失礼)
ただいま!とドアを開けると、女の人の靴があった。
わ。何!?露伴に女の人のお客さん!?
リビングに行くと、綺麗な女の人が、いつも私が座っている席に座っていた。
なんか…嫌な気分。


「あら、妹さん?」

「いや、ぼくに妹は居ないよ。ただの居候だ」

「お邪魔してるわよ、居候さん」


ニッコリ笑った顔はそりゃあもう、月がスッポンを照らしつけてるようなもんだった。
お邪魔してるわよ、というのは露伴の家にお邪魔してます、と言う意味なんだろうけど、何だか私に邪魔だと言っているような気がした。
女の人は興味なさそうに私から視線をそらすと、露伴に熱い視線を向ける。
うわー!とても露骨な人だ…。きっと露伴も気付いているはずなのに、露伴はさらりとそれを無視する。


「そういえば、近くにいい喫茶店があると聞いたの、そちらに移動しない?」


邪魔者が帰ってきたから、場所を移そう、という副音声が聞こえた。
別に移さなくても、私が消えればいいじゃん。


名前が嫌な顔をして階段を上がっていった。
嫉妬…したと受け取ってもいいのかな?
我ながら嫌な性格だ。
ただの編集者だと名前に言わず、この女に好き勝手言わせてみた。
いつもならさっさと帰れと追い出すだけだが、少し利用させてもらった。


「ねぇ、露伴先生?」

「変な声を出さないでくれないかい?それと、用事が済んだならさっさと帰ってくれ」

「なっ…」

「それと、さっさとその席から移動してくれ。そこは名前の席なんでね」

「名前?さっきの子ね。いいの?女子高生と二人で暮らしてるなんて…」

「別に。学校には親戚だって偽っているし、なんら問題はないよ」


何だか今日はよく喋る。
機嫌がいいのか?ぼくは。
女は反対にだんだんと機嫌が悪くなっているようだ。


「あの子のこと、好きなの?」

「…君には関係ない」

「信じられない、まだ高校生でしょう?笑っちゃうわ」

「……」

「しかも学校に偽っているですって?そんなことをして」


気分が悪い。
この女とはもう話したくない。
そう思った途端、ヘブンズ・ドアーを発動していた。
別に本の内容なんか塵ほども興味ないので、「今後、岸辺露伴に近づけない」と書いて家の外へ放っておいた。
これから愛しい居候の機嫌を取らなければならないから、忙しいんだ。


「名前、入るぞ」


返事がないので勝手に入った。
別にぼくの家なんだから文句は言わせない。
しかし、名前からは文句ではなく沈黙しか聞こえてこなかった。


「名前、あの女はただの編集者だ」

「ふーん。ありがちだよね」

「何が?」

「露伴の夢小説の、ヒロイン役は編集者さんが多いんだよ」


夢小説、というのは名前が好んで読んでいるものらしく、勝手にぼくや仗助などとの恋愛を小説で楽しむものらしい。
別に興味ないし、勝手にやればいい。
しかし聞き捨てならないのが、そのぼくの相手が編集者という設定が多いと言う。


「勘弁してほしいね。あんなうっとおしい女は」

「でも綺麗だったじゃん」

「どこが?ただ化粧で上書きしているだけだろ」

「でも、露伴のこと好きなんだよ、きっと」

「ぼくは好きじゃない」


何故名前はあれを養護したがるのか分からないが、名前はまだこっちを見ない。
好きとか好きじゃないとか、あの女に関してはどうだっていい。
ぼくには、そんなことより気になることがあるんだ。


「名前、嫉妬してるのかい」

「なっ!馬鹿か!バーカ!」

「やっとこっちを向いたな」


ニヤリとと笑ってやると、上目遣いで睨まれた。
それ、逆効果だからやめたほうがいいぞ。


「まったく…ぼくがあんな外見だけの女に惚れると思ってもいたのか?」

「うーん…てか露伴が人に惚れるってこと自体ありえなさそう。漫画一筋!みたいな」

「失礼だな…ぼくだって恋ぐらいする」


え!?と名前が目を輝かせた。
こいつ…この目はまたそういうことを期待しているんじゃないだろうな…。
何ですぐにそっちに持って行きたがるんだこいつは!


「もしかして相手はじょ」

「仗助なわけないだろ!」

「…ですよね…」

「君は本当にそればっかりだな…」

「でも露伴が恋かぁ〜露伴に好かれる人なんか想像もつかないなぁ」


はぁ、とぼくはため息をついた。
こいつのアホな会話にはついていけない。
とりあえず、鏡を見てみろ!


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