NON

放課後、仗助とドゥ・マゴに行くと、また出会った。


「よっ、名前」

「あ、裕ちゃん」

「何だよ、名前もう裕也と知り合いになったんだ」

「知り合いどころかキスまでしたよな」

「してないから。記憶捏造すんな」


どういうこと?と仗助。
どういうことも何も、何もなかったって!
何故このナルシストは嘘ばっかり言うのか!


「でももうちょっとだったのに、岸辺露伴に邪魔されてよぉ〜」

「いやいやいや、そんな簡単にファーストキス奪われてたまるか!」

「え、名前、ファーストキスなのか」

「どうせ彼氏居ない歴=年齢だもん…」


仗助はマジすか!と目を輝かせる。
何だよ!人の不幸がそんなに嬉しいか!
すると、裕ちゃんが調子に乗り始め、私の肩を掴む。


「じゃ、ファーストキスは俺がもらっとくぜ」

「はぁぁ!?何で!何でもほしいお年頃かお前は!」

「てめぇ裕也!ふざけんなよ!俺が、じゃなくて!名前が嫌がってるだろ!」

あぁ救世主!やっぱり頼りになるのは仗助だ!
裕ちゃんと仗助はパチパチと火花を散らしている。

「なるほど…うかうかしてられねぇってことか…」

よし決めた!と裕ちゃんが叫ぶ。
何を?と聞くと、今日、告白するぜと言った。


「は?裕也?お前何言って…」

「そうなんだ!頑張れ!裕ちゃんなら大丈夫だよ」

「おう!」


ニッコリ笑った裕ちゃんは、急に真面目な顔になって私の方を向いた。


「名前、好きだ」


「……は?」


「付き合ってくれ!」



何だって!?



大変なことが起こった。
今、何でか知らないけど、裕ちゃんが私を好きだと言った。
付き合ってくれとも言った。
どこまで?と返すべきだろうか。
でも、裕ちゃんの顔は本気だった。


「なっ…裕也…!」

「名前、返事はいつでもいいぜ。まだ知り合ったばっかだしな。もっと俺を知ってから返事してくれ」

「え、いや、えっと…裕ちゃん…?」

「じゃあな、名前!」


裕ちゃんはそう言うと、恐るべき早さで私の頬に口を当てて、つまりキスをして、去っていった。


「裕也の野郎…!名前、大丈夫か!?」

「だい、じょうぶだけど…」

「名前?」

「ごめん。先帰るね…」


頭が回らなかった。
ちょっと整理しなきゃいけない。
ええと、裕ちゃんはナルシストでナンパで、でもいい奴で。
私のことが好きらしい。
でもまだ出会って2日目だ。私が裕ちゃんに惚れるのはわかるけど、って、分からん分からん!惚れない!
ダメだ、ほだされてしまう。
しょうがないじゃないか…告白なんかされたのは初めてだ…。
しかも極めつけにほっぺにキ、キスされて、しまった…。
頭の中から裕ちゃんの笑顔が消えないまま、私は家に入った。


「ただいま…」

「…また何かあったな?噴上裕也か?」


ちょっと鋭すぎませんか、露伴先生。
また晩御飯抜きだの何だの追いつめられた私は、話すしか道が残されていなかった。
まさにデッドオアデッド。

すべてを話し終わった後、露伴は下を向いて何か考えていた。


「名前…噴上裕也のと付き合うのかい?」

「え!?えっと…分かんない…まだ全然そんなこと考えられないよ…。裕ちゃんで頭いっぱいなんだよ…」

「…妬けるな」

「何?」

「どっちの頬だ」


こっち、とまだ熱をもっている頬を指さすと、露伴はあろうことか、同じ場所にキスを落とした。


「ろろ露伴!?」

「消毒だ!」

「えぇ…でも、裕ちゃんと間接キス…!」

「…気分悪くなってきた…」


はぁ、と露伴は大きいため息をついた。
お前は物事をそう考えることしかできないのか、とも言われた。


「でも、これで噴上裕也のことは頭から消えただろ」


私の右頬は、さらに熱くなり、一晩中気になって仕方なかった。


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