NON

朝仗助を見かけた。
数メートル前に居た仗助は、可愛い女の子に囲まれていて、きゃあきゃあと黄色声に包まれていた。
そういえば、そんな設定あったっけ。
確かに仗助かっこいいもんな〜!優しいし!現実に居たらそりゃ惚れちゃうって!
あ、現実に居るんだった。
そんなアホなことを考えていると、仗助がこっちに気づいたのか手を振った。
いや、もしかしたら億泰が私の後ろに居るのかもしれない、と私は後ろを振り向いた。
誰もいなかった。


「おい名前、どこ見てんだよー」

「あ、やっぱ私でしたか…」

「教室まで一緒に行こうぜ」


億泰はどうしたのかと(思い出したが、仗助と億泰はご近所さんだった)問えば、朝からモテてる仗助にムカついて先に行ってしまったらしい。
なんだかそのときの億泰の顔が目に浮かぶ。きっと、かなり嫌そうな顔。
仗助と一緒に歩き始めたのはいいけど、ビシビシと背中に感じるものが。


「なぁんか視線が痛い…」

「気にすんなよー。つーか名前が来てくれて助かった」

「怖いなぁ、女子は」


チクリとお腹が痛む。
私の表情から何か汲み取ったらしい仗助は、私の手を取り、真剣な顔で見つめてきた。


「大丈夫だよ。名前は何があっても守ってやる!」

「仗助…」


クサい!けど何で仗助が言ったらこんなに様になるのか!
つーか優しすぎだぜあんさん!


「ありがとう仗助!やっぱ仗助は優しいなぁ…!」

「おう…(何だか優しい人止まりって言葉が浮かんでくる…)」

「でも大丈夫だから!」


できるだけ背中の視線を気にしないようにして、仗助と教室まで歩いた。


他愛もない話で盛り上がり、他愛もないことで大笑いする。
こんな他愛もない日常は、久しぶりだ。


「億泰って甘党だよなぁ〜」

「悪ぃかよ…」

「プリンも結局んまぁぁあいって食べてたしね」

「何だよぉーそんなとこまで見てんのかよ」

「仗助がチンチロリンでしたイカサマの正体も知ってるもんね」

「マジかよ!露伴には絶対言うなよ、殺されるから!」

「殺されはしないよ。指は詰められるかもしれないけど……」

「いや、なんか関西のヤクザがどうとか言ってただろぉ〜あいつならやりかねねぇよ」


目に埋め込んでどうとか、のやつか。
確かにやりそう。考えただけでも気分悪くなったので、露伴に言うのは止めとこう…。
…あれ?


「ちょっと待って…今恐ろしいこと思い出した…」

「えっ、な、何…?」

「私…ヘブンズ・ドアーで全部読まれたんだよね…」


ピシッと仗助の背後に亀裂が入った気がした。
そうだよ。露伴に全部見られたってことは、仗助のイカサマもバレてるじゃないか!


「つーか、名前、全部って?」

「もう全部。隅から隅まで読まれた。私のプライバシー全部露伴にただ漏れ」

「スリーサイズとかもか!?」

「それ犯罪だろ!」


スリーサイズに目をキラキラさせないで億泰。
大していいもんじゃないぜ!私のスリーサイズなんて!


「まぁ、別にいいんだけどね」

「な、よくねぇだろー」

「名前一応女の子だしな!」

「億泰、一応は余計じゃないか」


なんか、デジャブ。


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