NON

そのうちバランスを崩し、後ろに倒れ、私はベッドに背中からダイブすることになったのだが。


「ちょ…何!退いてよ!」

「断る」

「断るな!もう、本当、なんなの…」


視界いっぱいに写る承太郎。
ベッドにダイブしたのは私だけでなく、承太郎もそのまま私に覆い被さった。
端から見れば、いわゆる押し倒し。
真っ赤になる顔を隠しながら、必死に強気な態度を取るけど、心臓は張り裂けんばかりに狂喜乱舞している。


「名前、俺のことが好きなんだろ」

「なっ!?なななにいい言って、んのよ!!馬鹿じゃないの!?」

「動揺しすぎだ」


なんてこったい。(二回目)
私の気持ち、モロバレ。
嘘だ!嘘だといってくれ!恥ずかしすぎるだろ、そんなの!
なんとかこの恥ずかしすぎる状況から脱出しようと試みるが、所詮男と女の力はの差は目に見えていて、どんなにもがこうが、決して承太郎の手に掴まれた私の手首は解放されることはなかった。
ていうか、近い。顔が近い!


「じょ、承太郎、顔が」

「なんだ」

「顔が近い!」

「キスするんだから近づかなきゃだめだろうが」

「はぁぁ!?え、ちょっと待って!?意味わからん!」


私は必死に足で承太郎の腹を押し返す。
待て待て待て。今、この男は何と言った?
キス?接吻?なにそれ!
理解不能に陥っている間にも、承太郎の顔は徐々に近づいてくる。
ダメだ、これ以上近づかれたら死んじゃう。


「〜えいっ!」

「ぐあっ!?」

「承太郎、う、討ち取ったり!さらば!」

「テメェ!名前!ま、ちやがれ…」


承太郎は股間を抑えてうずくまった。
秘技、金的蹴りだ。
いかに承太郎とは言え、ちゃんと急所はあったらしい。
私は猛ダッシュで保健室を後にし、教室へと戻った。
顔の赤さを何人かに指摘されたが、私は答えることができず、そのまま机に突っ伏した。
何だったんだ、今のは…。


「明日から…どうしよう…」


もうまともに承太郎の顔なんか見れない。
というか、次会ったら殺されるかもしれない。
何故あの時キスされそうになったのか、その意味は分からないまま現国の授業が始まった。



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