NON

苗字さん、残念だったわね、でも今日もかっこよかったわよ!
群がる女の子が口々に喋る。
毎日のように承太郎とバトルを繰り広げているうちに、何故か有名人になってしまった。
君たち、私はただ承太郎と仲良くなりたいだけの、君たちとなんら変わりない乙女なのだよ。
女の子たちは頬を軽く染めながら承太郎と私のかっこよさとやらを語っている。
何故だ…いつから私はこんなキャラに認定されたんだ…。
私はもっと自分に正直になるべきだった。
きゃあ!承太郎くんかっこいい!ぐらい言っておくべきだった。
…自分で言うのもなんだが、キモすぎる。
とにかく、この女の子たちは私が承太郎に淡い恋心を抱いているなんてことは微塵も思っておらず、日々戦いに明け暮れる私と承太郎を美化して見ているらしい。
その根本に、私のアホらしい照れ隠しがあるなんて露知らず。


「そういえば承太郎見当たらないけど、どこ行った?」

「承太郎なら保健室じゃないかな、ホラ、次現国だから」


承太郎は現国、特に午後の授業の最初の現国では、屋上に行かず保健室で過ごすことが多い。
きっと睡眠を取るためだ。
私は教えてくれた女の子にお礼を言って席を立った。
そう、保健室に行くために。
こっそり横のベッドで寝たっていいじゃないか。
それぐらい許してください、神様。
保健室に行くと、先生は不在らしく、人の雰囲気もなかった。
こう見えて武道を習っているのだから、気配を読むのは得意だ。
承太郎、居ないのか。
がっかりしたが、せっかくなので昼寝をすることにしよう。
ベッドを囲んであるカーテンを開けた時、今まで感じなかった気配がいきなり背後に現れた。


「!」

「お前もサボリか?名前。それとも俺と添い寝がしたくて来たのか」

「じょ承太郎ォォォ!?」


振り向くと、綺麗な顔があった。
って、添い寝なんてそんな大層なこと考えてません!そりゃあ願わくば寝顔なんか見てみたかったとかは…ごにょごにょ。
ニヤリと笑う承太郎は何時も以上にかっこよくて、思わず私はくらりとした。
なんだろう、脳みそがとろける感じ?
ていうか、今二人きりだ。
チャンス!やるのよ名前!今こそ告白の時!
あなたのことが好きでした、って言っちゃえ!


「は、ハッ!何言ってんのよ!寝込みを襲って今日こそ息の根を止めてやろうと思ってただけよぉぉ!」


バカー!
息の根止めちゃったら駄目だろう!名前のバカ!マヌケ!意気地なし!
承太郎はクックッと声を押し殺して笑っていた。
それもそうだ。なんだよ息の根止めてやるって。いつの時代の不良だよ。
それにしても笑顔が可愛い。


「わ、笑うな!」

「おっと、テメェな、前から言おうと思ってたんだが、スカートで蹴りすると見えるぜ」

「は?何が…っ!!」

「今日は白か」

「み、見るなぁぁぁ!」

「テメェが見せたんだろ」


なんてこったい。
じゃあ今までずっと私は承太郎にパンツを見せ続けてきたわけか。
もうやだ。飛びたい。
蹴り上げた足を承太郎が離してくれないので、私は必死にスカートを両手で下げた。



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