NON

とにかく、このままでは駄目だ。名前もいつまでもアジトにいるわけにはいかないし、俺のせいでチームの仕事に支障がでるのもいけない。
幸い今日アジトには誰もいない。全員例の麻薬を流していた組織の後始末に出ていて、残っているのはしばらく休みをもらった俺と名前だけだった。
仮眠室のドアがガチャリとあき、名前がソロリと出てくる。
俺に気づくと、パッと顔を背けておはようミスタ、といいどこかへ出かけようとした。
そこまで露骨にされると俺だって傷つくんですけど……。

「オイ名前」

「なっなにっ」

「……あのなァ、俺は別にお前に避けて欲しくてあんなこと言ったわけじゃあねぇんだよ」


あんなこと……と名前は顔を赤くしてうつむいた。前から思っていたが、こいつは恋愛とか、そういうことに全く免疫がないらしい。
というか人との接し方をあまり知らないらしく、俺やチームの
慣れた奴らにはとことん懐くが、他人にはとことん冷たいのだ。
一言で言えば不器用。だから今回も俺を避けるということで逃げるしか術を知らなかったのだろう。


「お前が嫌なら、俺はなんもしねーから。今まで通りでいいんだよ」

「今まで通りって……」

「散々くっつかれてたのにいきなり離れていきやがって……極端すぎるっつーの」

「俺、ミスタは好きだけど、そういう好きはわかんないんだよ」

「あァ、そーだろうよ。だから俺の気持ちなんて忘れていいから、お前の好きにしろよ」


それでも気持ち悪いから、近づきたくないってならもう俺は諦めるしかないけどな。
そういうと名前は口をへの字に曲げて俯いた。


「……今まで通りでいいの?」

「俺がいいっつーんだからいいんだよ」

「、うん」


名前はズズッと鼻をすすると、笑顔を作って俺の横に座った。あぁ、この位置だ。
とりあえずはこれでいいのだ。ようやく自分の気持ちを受け入れたのに、避けられるなんてたまらない。
だが、忘れていいなんていったが、忘れさせるつもりは毛頭ない。珍しく本気だし、逃がすつもりもない。
俺は諦めが悪いのだ。
これからどうやって俺に惚れさせようかな、などと呑気なことを考えながら名前の頭を撫でた。

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