NON

任務だ。とブチャラティがアジトで暇を潰していた俺と名前に書類を渡した。
名前が体調を崩してからしばらく経ったが、あれから名前はだいぶ仕事に慣れたのか、また体調を崩すということはなくなっていた。敵対組織の調査がすすみ、治安が良くなりはじめたとこもある。
ブチャラティから渡された書類を見ると「アイドルの護衛」と、ギャングの血なまぐさい仕事とは程遠い呑気な任務が書いてあった。
名前はアイドル?とハテナマークを浮かべていたが、俺はこのアイドルに思い当たる節がある。というか、度々このアイドルの護衛をボスに頼まれることがあるので、いつものことだ。
別に身の危険とかそういうことはないのだが、つまり、過保護な親父の職権乱用だ。


「あーートリッシュか」

「そうだ。握手会をするらしい」

「へぇ」

「……トリッシュ?って、あの?」


握手会如きでギャングを使うとかなにかんがえてんだうちのボスは、と思うのはもうとうの昔に諦めた。
トリッシュが天下のパッショーネのボスの一人娘というのは、パッショーネの中でもごく一部しか知らないことだ。
名前も知らなかったらしく、ボスの娘だと教えると、大層驚いたようだった。


「トリッシュってあのトリッシュ!?マジかよ俺ファンなんだよ」

「お前もそーいうの興味あるんだな……」

「マジ!!トリッシュとおしゃべりできるの!?ヤベーテンションあがる!!」


あの曲が好きだの、笑顔がかわいいだの力説する名前に、少し複雑になる。
いや、そういうんじゃねぇよ、ただ名前はずっと俺ばっかり見てたから、他のことには興味がないとばかり……なにかんがえてるんだ俺は!!
気持ちの悪い考えを頭を振って消すことに務める俺をブチャラティは不思議そうに見つめる。(名前はトリッシュに夢中なようだ)


「あくまで任務に集中するんだぞ」

「わかってるよ!!でもよくあることって、ミスタもブチャラティも、もしかしてトリッシュと知り合いだったりするの?」

「知り合いっつーか……まぁそうだな」

「うわぁ、いいなぁ」


知り合いなんて薄い仲じゃあなかったが、説明するのも面倒なので放置しておく。
生トリッシュだよ〜などとハイテンションの名前を見ながら若干微妙な気分になりつつも、俺と名前はアジトを後にした。


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