NON

変な新入りが入った。
ジョルノが加入したときも変な奴が入ったと思ったが、それ以上に変わり者だ。
なんとあのミスタに懐いているのだ。
いや、懐いているというか……懐くなんてかわいいもんじゃないとおもうんだが、ミスタ曰く名前はソッチ系ではないらしい。それもそれでどうなんだ、その懐き方。
ミスタに命を助けてもらったらしく、それからミスタにべったりらしかった。一緒の部屋で寝食を共にしてると聞いたときはさすがに少しミスタに同情したが、最近はミスタも満更ではないみたいだった。
しかしありゃ、懐くというよりほとんど依存だ。


「あれ?アバッキオ、名前は?」

「さっき体調悪いってんで仮眠室に寝にいったぞ」


ふーん、とトイレから帰ってきたミスタは興味なさそうに呟くと雑誌を手に取りソファに腰を下ろした。
前は四六時中べったりで、それこそ風呂にもトイレにもついていっていたらしいが、ミスタの必死な説得により風呂やトイレのときは名前もおとなしく待っているようになった。それ以外は本当にべったりで、ずっとミスタの横に陣取っている。まるで主人の命令を待っている犬のようだ。
ミスタがトイレに立ったあと、名前はちょっと寝てくる、と仮眠室に消えて行った。ミスタの前では我慢してたようだが限界だったらしい。
まぁこのごろ忙しいし、慣れない土地で慣れない仕事に疲れが溜まったんだろう。
ブチャラティも無茶はさせないようにしてたのだが、毎回ミスタについて回っていたので最初からフル稼働をしていたのだ。


「あれ、名前は?名前がミスタと一緒に居ないの、珍しいな」

「あ?……アァー、まぁ、そうだな」

「名前なら仮眠室で寝てるぜ」

「あー……結構無茶な働き方してましたもんね」


任務から帰ったらしいフーゴが、ミスタを見て苦笑した。
ミスタはバツの悪そうな顔をしながら俺は一応休むよう言ってるんだがな、と仮眠室をチラリと見ながら言う。
自分じゃ気づいてないだろうがこいつ、さっきからチラチラ仮眠室を見て落ち着きがない。興味なさそうなフリをしているが、さっきから気になって仕方ないらしい。
面白いので言ってやらないが。


「側に居たいんでしょ、ミスタの」

「テメーなァ他人事だと思って……」

「いいじゃあないですか。かわいいもんでしょ」


クスクスとフーゴが笑う。
ミスタと同い年で、タッパもある名前をかわいいとは、なんだか程遠い言葉のような気がするが。
ミスタはしっくりきているようで、フン、と鼻を鳴らすと手元の雑誌に目を移した。
おいおい、こりゃあ……ミスタもだいぶ絆されてるようだな。
居心地が悪くなったのか、ミスタは開いたきりまったく読み進めていなかったであろう雑誌をたたみ、立ち上がった。


「……ちょっと様子みてくる」

「フフ、いってらっしゃい」

「別に心配してるとかじゃねーからな、暇だからな」

「わかったわかった、早く行ってやりなよ」


ミスタは名前がきてから増えたため息をつき、仮眠室に向かった。フーゴはミスタが居なくなっても楽しそうに笑っている。
ミスタも素直じゃないですね。と言うフーゴに、そうだなと返す。


「面倒見がいいですからね、ミスタは」

「それもあるだろうが、な」


べったりなのは、名前だけじゃないような気がするぜ、俺は。


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