NON

最近、麻薬を流す奴がいるらしい。
この、天下のパッショーネ様の縄張りで、だ。
うちも昔はそんなこともしてたらしいが、ジョルノがボスの補佐についてからは麻薬はパッショーネの縄張りから一切排除した。
はずだったのだが、どうやら他の組がわざわざパッショーネの縄張りで麻薬を捌いているらしかった。
つまり、喧嘩を売られているのだ。
そのせいで治安が良かったこの街も、裏では麻薬が行き交い暴力沙汰だとか、強姦だとかの被害がポツポツと報告され始めた。
全く迷惑な話だ。喧嘩を買おうにもまだ調査中で尻尾を掴めないでいるので、見廻りを強化して、せめて住民に少しでも安心してもらえるように務めているのが今の精一杯だ。


「おい、さっきの東洋人、日本人かな?」


今日も絶賛見廻り中だ。そんな中、ふと会話が聞こえた。
日本人?この大変なときに観光か、面倒なことにならなきゃいいがな……


「ぽいよなァありゃ有り金全部巻き上げられるぜ、カワイソーに」

「連れてった奴ら目がイッてたもんな……最近治安悪いし」

「……オイ、そいつらどっちいった?」


すでに面倒なことになっていたようだ。
目の前でそんな話をされては、見逃すわけにはいかない。もしかしたら麻薬を流している人物を知っているかもしれないし、ついでにその日本人を助けてやるか。
あっちだ、と男たちが指差した路地裏に向けて俺は足を早めた。

しばらく走ると、男の下品な笑い声と苦しそうなうめき声が聞こえた。
そちらに目を向けると、どうみても麻薬中毒です、みたいな顔した男が東洋人(あいつらの言ってたとおり、日本人だろう)を壁に押さえつけてナイフでグサグサと刺していた。まだ死んでない。
声をかけるより先に、リボルバーを構えて四発、それぞれ四人の男の足を撃ち抜く。
あーあ四発……不吉なことが起こりそうだ。そんなこと言ってる場合じゃないが、俺にとっては重要事項だ。
うずくまった男たちに銃口を向けつつ何が起こったかわからないらしい日本人の男に近づく。


「オイッ大丈夫かよ……って、あんまり大丈夫じゃなさそうだな……」


助かった、とホッとしたのか、男は俺を目にするとフッと糸がきれたように倒れた。多分、出血多量。
おいおい、まさかこれ、俺が連れて帰らねーとまずいのか?どうみても麻薬中毒のこいつらは連絡して引き取りにきてもらうとして、こいつはこのまま放っておくわけにはいかねェよな……。
アァ、やっぱり面倒なことが起こった。

これが、俺と名前の出会いである。
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