NON

俺はゆっくり息を吸うと、名前に背を向けたまま言い聞かせるように言った。


「いいか、名前…お前は俺が、お前が死んでも生きていけると言ったが、一度しか言わねーからよく聞けよ」


突然懐深く入ってきて、かき乱すだけかき乱しといて自分は死んでもいいとか、そんなの許せるわけねーだろ。


「俺だってお前が死んだら生きていけねーよッ!!わかったかよッ!わかったなら能力は使うな!俺の代わりに死のうだなんて、二度と言うんじゃねーぞ!!」


名前が息を呑む音がした。
認めちまえば楽なもんで、あぁ俺は名前が好きだと思ったらもやもやしていた胸の内が晴れたようだった。
名前は俺のことを恋愛感情で好いているわけじゃあないとわかってはいても、惚れた方が負けなのだ。
傷つかせないとは言わないが、必要以上に傷ついて欲しくない。
ましてや俺を庇ってだなんて、男が廃るだろう。
たっぷり時間をかけて、名前はわかった、ごめんと呟いた。


「……お前のスタンドは近接パワー型だったよな」

「うん」

「敵さんもそろそろケリをつけたいころだろう…」


チマチマナイフで体力削るのは効果的だが、時間がかかりすぎる。ちんたらやってたら危険なのはあっち側だ。
だんだん射程距離が近づいてきているみたいだし、そろそろ自分の手でトドメを刺しにくるだろう。


「俺が相手を引きつけるから、攻撃の瞬間を狙ってお前がブチのめせ」

「ハァ!?それって囮ってことだろ!?そんなの…」

「俺のスタンドよりお前のスタンドの方が接近戦向きだ。俺は大丈夫だから、少なくともお前よりは丈夫にできてる」

「……でもっ」

「俺が嘘つくと思うか?」


そう言って一度だけ目を合わせると、名前は決意したようで俺から少し離れた。
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