※彼氏がいる女の子と北山さん

 不毛な恋をしているなんてとっくに自覚している。
 あの人よりも俺のほうが1日でも早く出会えていたなら自分のモノにできていたのだろうかなんて想像はもう何百回とした。
 人のものに手を出すなんて、悪いことをしているのもわかっている。こんな事はもうやめようと思っているのに結局ズルズルと続けてしまう。
 きっと麻薬ってこんな感じなのかな。知らないけど。
 短くなったタバコを最後に思い切り吸い込み肺いっぱいに満たして、ため息と共に煙を吐いた。
 サイドテーブルの上にあった灰皿にタバコを押し付け、ゆっくりと洗面所へと向かう。
 ホテルの部屋に着いた途端、アクセサリーを外してくると告げてからもう随分と経ったのにまだ戻ってこない彼女に痺れを切らしたのだ。
「ねぇ、まだ?」
 後ろから抱きついて首筋に顔を埋める。すぐに名前の香りが鼻孔をくすぐってゆっくりと興奮していくのが自分で分かった。
「ごめんね。ネックレスが上手く取れないの」
「取ったげるよ」
「ありがとう」
 そう言うと名前はネックレスが取りやすいように右手で髪をかき上げた。露わになる白い首に更に興奮したのも束の間、うなじの少し下に赤い痕を見つけて一瞬で高まっていたものが氷点下へと下がる。
「んだよこれ」
 想像以上に低い声が出てしまった。
「え?」
 驚いて振り返った彼女の腕を掴み、ベッドへと向かう。そのまま彼女を押し倒した。
 俺を見上げる瞳には少しの恐怖心と、そしてどこか楽しそうな感情が混ざり合っているのが分かった。この後に及んで恐ろしい女だなと思う。
「みっくん、怖いよ。どうしたの?」
「悪いけど、今日は優しくできないから」
 噛み付くようなキスをすれば、部屋の温度が一気に上がる。舌を絡ませながらワンピースのファスナーを外し、次にブラジャーへと手をかけた。ホックを外して剥ぎ取ると、形の良い胸が露わになる。
「キスしかしてねーのにもうビンビンじゃん」
 そう言って乳首をつつくと、甘い声を出して眉を顰めた。片方の胸は指で弄り、もう片方は舌で転がしてみたり押しつぶしてみたりと両方同時に攻めれば継続的に甘い声が部屋に響いて少し満足する。
 しかし今日の俺は怒っているのだ。いつもならそろそろ下のほうも触ってやる頃だが、ずっと乳首ばかりを弄っていると、もどかしそうにくねくねと腰を動かしだした。
「ねぇっ、みっくん、……っあ」
「んー?」
「も、そこばっか、嫌だっ…、」
「じゃあどこがいいの?」
 耳元で囁くと、頬を紅潮させた彼女が恨めしそうに俺を見た。その視線にぞくぞくする。
「言うまでずっとここだかんね」
 再び胸を攻め始めるとさっきよりも甘い声が聞こえ始める。
「下も、触って……」
 もう限界だったのだろう。ねだるように請われて思わずにやりと口角が上がってしまった。
 パンツにはもう染みが出来ていて、脱がしてみるとそこはもうとろとろになっている。指を入れて名前の良いトコロを刺激すると待ちわびていた快感に身体を弓なりに反らし始めた。
「あっ、あ…、、や、も、イキそ…っ」
「駄目。まだ我慢しな」
 彼女がイク直前で手を止める。さっきと同様に恨めしそうな顔をするけど今日は優しくできないって言ったでしょ?
 何度も刺激とイク直前で手を止めるのを繰り返していると瞳に涙を溜めて今回は何も言っていないのに自ら懇願し始めた。
「みっくん、おねがっ、イカせて…っ! おねがい…、おかしくなっちゃう」
 腰を浮かせ、必死におねだりする姿はとてつもなく官能的で流石に俺も折れてしまう。なにより俺もそろそろ限界だった。
「仕方ないなぁ」
 動かしていた指を速めると直ぐに名前は達してしまった。自分だけ満足されては困る。
 散々焦らされてぐったりとベッドに倒れこんでいる彼女の前に自分のモノを差し出す。
「しゃぶってよ」
 返事を聞く前に無理矢理口元に近付けて咥えさせた。彼女の後頭部を掴み、自分のイイように動かすと苦しいのか涙が溢れていた。
 そろそろいいかと口から引き抜いて四つん這いの体勢にさせる。
 名前のソコはもう今か今かと快楽を待ちわびるようにヒクついていた。細い腰を掴み、一気に挿入してパンパンと音を立てて打ち付ければ、あまりの締め付けに目眩がする。
「あっ、あ…ん、みっく、イッちゃ…あ!」
「また? いいよ。イキな」
 そう言い終わるかどうかのところでびくびくとナカが痙攣して更にキツく締め付けられる。達したんだとすぐに分かった。
 力が抜けてそのままベッドに倒れた名前に覆い被さって腰を動かし続ける。だって、俺はまだイッてないし。
 振動で髪の毛が揺れて視界にあの赤い跡が入ってきてまたイラつく。
「えっ、ちょ、だめっ! 怒られちゃう!」
「怒られればいーじゃん。悪いことしてんだし」
 彼が付けた跡を上から塗りつぶすようにキツく吸い付くと、それを察した名前が必死に抵抗したけど止めずに更に吸い付いた。
 唇を離すとそこは赤というよりも紫に近い色に変色していた。薄くなる事はあっても濃くなる事なんてありえない。バレて怒られればいいんだ。
 怒られて、フラれて、そして俺に泣きついて、俺の物になればいいのに。
 そろそろ俺も本当にもう限界で、スパートをかけるように打ち付けると腰があまく痺れてあっけなく達してしまった。
 ナカから引き抜いて俺もベッドになだれ込む。独特の倦怠感を柔らかいベッドが包んでくれて眠りそうになる。
「ごめんね。もうこれで最後にするから」
 視線だけ横に向けると申し訳なさそうな顔をした名前が俺を見つめていた。
 このセリフを聞くのは何度目だろうか。どうせ暫くしたらまた連絡が来て、俺もまたどうせ会ってしまうんだ。
 名前は俺のものになることは無くて、俺も名前を手に入れられない。
 そんなの、俺が一番分かっている。
 お前の事を一番分かっているのは俺なのに。







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