「改めまして、名字名前です」
「藤ヶ谷太輔です。自分で言い出しといて何ですけど、本当にいいんですか?」
「それは私のセリフです。本当にいいんですか?」
「俺は全然。家の事やってもらえるとスッゲー助かるし」
「私も、今の状況でこんな条件の良い話無いと思うので。なるべく早く仕事見つけるように頑張ります」
「まあ、あんまり俺の事は気にしなくて良いんで。焦り過ぎないでゆっくりでいいんじゃないですか?」
「……ありがとうございます」
 彼女を所謂、住み込みの家政婦で雇うという突拍子もない事を言いだした昨日から明けて今日、改めて彼女と今後の事を話し合う為に自分の部屋へと招いた。
 今考えてみてもなんであんな提案をしてしまったのか分からない。ただひとつ言えるのは全く後悔していないということだ。
 きっと一泊させて少し情が沸いたのと、頭の片隅にあの綺麗な泣き顔が焼き付いてしまっていてふとした瞬間に思い出したりしていたからだろう。
 お礼に来てくれて、まだ仕事も部屋も見付かってないとしょんぼりとした表情で言った彼女はまるで捨てられた子猫を彷彿させるそれで、気づいた時には既に救いの手を差し伸べてしまっていた。
 彼女が提案にのってくれたから良かったものの、普通に拒否られていたら超恥ずかしい奴じゃんと今なら思う。
「一応履歴書持ってきたんです」
 そう言ってバッグからクリアファイルを取り出して、綺麗な字の並んだ履歴書を渡してくれた。丁寧に写真まで貼ってあって少し頬が緩んだ。
「あ、同い年だ」
「え?そうなんですか?」
「俺も87年です」
 少し親近感が沸いた。ざっと目を通して履歴書をテーブルの上に置き、また彼女と向き合う。
「使ってもらう部屋はこの間の部屋でも大丈夫ですか?」
「全然大丈夫です。ありがとうございます」
「荷物って結構ありますか?一部屋に収まらなかったらクローゼットの空いてる所使ってくれても良いんで」
「荷物はそんなに無いですね。色々売っちゃったし。家具も元カレが買ったものだし……」
「なんか大きいもの運ぶ時は俺手伝いますね」
「あ、ベッドって搬入しても大丈夫ですか?シングルベッドを注文しちゃってて」
「どうぞどうぞ」
「ありがとうございます。後で業者に搬入先の変更を伝えておきます」
 ベッドは業者が持ってくるとして、まあ引っ越しと言えば引っ越しだが所詮隣の部屋だからすぐに終わるだろう。
「まあこれぐらいですかね。なんか質問とかあります?」
「あの、差支えなければ職業って何されてるんですか?」
 思わず吹き出しそうになる。今までの態度からしてもしかしたら知らないのかと思っていたが、まさか本当に知られていなかったとは。
 俺もまだまだなんだな、頑張らなければと身が引き締まる。
「なんだと思います?」
 あっさりとジャニーズです、Kis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔です、と言ってしまっても良かったが好奇心といたずら心には勝てず、少し意地悪な質問をしてみた。
なんて返ってくるのか楽しみで、じっと彼女を見つめる。
「サービス業で……、社長、とかですか?」
「まあ、そんな感じです」
 社長ではないが、サービス業とは一理あるので彼女の発言に乗った。
 だって、自分でアイドルですなんて言うのも恥ずかしいし、知られていないほうが気が楽だ。
「あ、あと今更なんですけど彼女とかいないんですか?」
「いたら流石にこんなこと頼めませんよ」
「ですよね」
「他には?」
「んー、今思いつく事は無いですね」
「それじゃ、改めてよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
 それから3日後には荷物も全て運び終わり、本格的に共同生活が始まった。





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