clap | ナノ
運命ってあるのかな。
運命?
ああ。
ジタンらしくないんじゃないか? ホイホイ運命とか口にしそうな感じだけど。
ああいうのは、うまい感じに使える便利な台詞だからさ。うっかり口をついちゃう言葉なんだよ。
ただ、自分で言っときながら思うんだよな、運命ってなんなんだろうって。
へえ。
オレらはさ、よくわかんないけど、本来なら有り得ないないような出会い方をしたんだよな?
異世界がうんたらかんたらってやつか。
そうそう。
通用しない常識とか見たことない服装とか、異世界の産物なんだと言われたら、まあ確かに頷けちゃうってところはある気もするし。
そうだなあ。
尻尾生やした生物とかな。
一応人間だからな……。
不思議だなァ。
でさ。オレもバッツも、本当は絶対会うはずなかったわけだろ。違う世界に住んでたんだから。
うむ。
なのに、出会えた。
バッツだけじゃない、スコールも、リーダーも、コスモスもカオスも敵も味方も関係なくみんな、会えるはずない人たちと出会えた。
これって、すげえ運命的な出会いじゃないか?
まあ、運命的ともいえるな。
なんだよ。
だってすごくないか?
まあすごいよ。すごくないとは言ってないだろ。
運命的じゃん。オレたちは、運命で出会えたんだよ。
そうか、運命かー。
……だから、たぶん、たぶんだけどさ。この戦いは、終わったらオレらはもとの世界に帰るって言われてるだろ。だから……別れるのも、運命なんだよなって思ってさ。
…………。
全部運命がしでかしたことなら、きっと結果がどうであれオレらは別れなきゃならないって、もう決まってるんだろうな……。
戦いが終わらなくても、また終わるまで繰り返される。いつか終わりは来るわけだろ。終わらせないなんてことは、戦士として言っちゃならないことだ。だけど、
ジタン
だけどオレ、どっかで思っちゃってるんだ。どっかで、期待しちゃってる。もしかしたら、なんてさ。バカみたいだよな。
ジタン、おれはね。
……うん?
おれはね。おれは運命なんか信じないよ。
…………。
運命ってのは、生まれたときからすでに決まってる流れなんだ。おれがおれとして生まれたときに、おれの人生ははじめからおわりまで、全部決まってたんだよ。
……うん。
おれの運命にはね、ジタン。おまえはいないんだよ。おれが生まれたときに、おれの人生にジタンはいなかった。だって、出会うはずない相手だったんだから。
……そう、だな。
これは、運命じゃないよ。おれとジタンは運命じゃない。
おれたちは、出会うべくして出会ったんじゃない。そうじゃないんだ。おれは、おれが流されるべきその運命に逆らったんだ。ジタンのいないおれの運命を打ち破って、おれはジタンに会いに来たんだよ、きっと。
……バッツ?
別れるのが運命であるはずがないさ。出会ったのも運命じゃなかったんだから。
もし出会えたことで流れが変わって、今は別れることが運命なんだとしたら、おれは何度でもその運命とやらを打ち破ってみせるよ。
だからそんなに悲しい顔をするなよ。大丈夫だ。おれとジタンは絶対に離れないからさ。
バッツ……。
ほら、おいで。おれの胸板で鼻水を拭くがいい!
ばか、鼻水なんか出てねえよ。
もし簡単に抗えるもんじゃないとしてもさ。
大丈夫だろ。二人なら。
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