「…何やってんだ?」
「…え?英語の課題?」
「締め切り言ってみな?」
「…う、……お…一昨日」
「………fool」
「うっさい」



放課後もしばらく経った頃

忘れ物を取りに教室に行くと、いろはがA4のプリントと電子辞書とにらめっこしながら座っていた


いろはは基本的に課題は締切から遅れがちだから、こんな風景もさほど珍しくない

きっと今日が補習も最終日だったからここにいるんだろう

最終の授業が終ったあと、寒気がするほど満面の笑顔を浮かべた英語教師にいろはがそっと肩ぽんをされてた


「また居残り提出かよ」
「しょうがないじゃん…こんなびっしり英作なんてできない」
「用紙配られた時からやりゃいいだろ?」
「そん時は違う宿題の締切が危なかった」
「恐ろしく自転車操業だな」
「……ごもっとも」


そう言って心なしか小さくなった。でもなんで皆終わるの?とか何とかうにゃぐにゃと続けるいろはにばれないように笑い、いろはの前の椅子に向かい合わせになるように座った


「あれ、政宗は何しに来たの?」
「ちょいと忘れ物をしちまってな」
「ふーん…、用事は済んだ?」
「yes」
「帰らないの?」
「そのはずだったが、悩めるprincessを見つけたんでなぁ」
「…それ私?てか、え、部活は?」


いろはは俺が部活をサボろうとしてるとでも思ったのだろうか。
怒った小十郎の恐ろしさを知っているいろはの声からは、どこか必死な様子が伝わってくる

それがまた可愛いと思う


「no problem,急に雨が降って休みになったんだよ」


こんな日に限ってついてねぇ、なんて考えたがまあ結果オーライだ

そこで初めていろはは外に目を向け、そして目を丸くした


「あ、ホントだ。すごい雨」
「……なぁ、久しぶりに一緒に帰るか?」
「いいけど、政宗チャリじゃなかった?」
「合羽忘れたんだよ」


今日の降水確率は10%だった。
さすがの小十郎も、少しやんちゃなにわか雨は予知できなかったらしい

「ああ。…あ!じゃあさ、帰りにケーキ屋さん寄らない?」
「cake?」
「そうそう政宗今日誕生日だしね、あ、おめでとー」


思い出したようにいろはは言う

「…なんつーmoodもへったくれもねぇ祝い方だよ」
「だって口で言ってこっぱずかしいことはメールで言ったし」
「俺はそれを赤くなりながら言うhoneyが見たかったぜ」
「……変態くさい…」
「No,これはromanだ」
「そのロマンちょっと、湾曲しすぎて分かんないよ」
「no problem!俺が分かればいいんだよ」
「……ああもう…好きにして」
「You are smart!そうと決まれば早速」




課題を片付けようか




(メールでも祝辞でもねぇ)

(お前がただ傍にいてくれることが)

(俺にとって何よりのpresentなんだ)







***



課題が毎度毎度締切を押すのは他でもない杜龍です







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