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「あー…やる気でない」

足元に転がるのは真っ白の年賀状の束

目の前に広がるのは、各教科の先生が思い思いに出した課題

窓の外にちらつくのは、その電気代を分けてほしいと思うくらいに豪華なイルミネーション

つまりはもうすぐクリスマス


この時期ばかりは、一人暮らしの生活費を稼ぎながら進学校に籍を置くことを決めた2、3年前の自分を蹴り飛ばしたくなる

いっそ課題など目をつぶって生活費の工面に明け暮れてもいいのだけど、冬休み明けの課題テストがそれを許してくれない

しかし現状を直視すると逃避せずにはいられない。もちろんやる気も出ない。

…さてどうしたものか


「逃避したい…三成あたりに斬滅されたい…」
「馬鹿か貴様は」
「かもね……うん?」
「貴様の私欲ごときに秀吉様の許可が下りる訳がないだろう」
「……う、うん?」



おかしい。自分の脳は忙殺されてしまったのだろうか。ひどく馴染みのある幻聴が聞こえる。


確かにさっき家に帰ったときに鍵は閉めたはず、うん、閉めた。
そして自分は一人暮らしのしがない学生、うん、間違いない。


だったら私が今会話をしたのは何なのか、400年前のあの人かそれとも最近話題のあの人か。



というか、この人はこんな悠長なことを言う前に「おじゃましました」と言うべきじゃないだろうか。マイペースすぎる


…とりあえず確認してみよう
もしどちらでもないのなら、お巡りさんに相談だ


炬燵机からテレビに向けていた顔を、錆びかけのブリキよろしくギギギ、と後ろに向ける


これで、今頭に思い描くあれがいたら末期だ。自分の頭がもう引き返せないところまで疲れているなんて、そんなことだけは避けなければなるまい。医療費は少ないに限るのだ。

いざ、頑張れ満身創痍な自分。


ぐるん。

「何だ、貴様は誰だ」
「………ぅゎぁ」

どうしよう。自分の中で何かが崩れる音がする。


嗚呼、ぐっばい5秒前の現実



(ああ神様なんてこと!)

(現実逃避が現実になってしまったら、次はどこに逃避すればいいの?)





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