なんで自分は敵とで、デート、をしているんだろう。なまえの表情はさながら宇宙猫であった。
そもそもなまえは今日ただの買い物に出かけたつもりだった。いつかの死柄木ようにフードつきの服で顔を隠してはいるが、見る人が見ればわかる人物が突然声をかけてきたのだ。
「敵連合の荼毘……!?」
わざとらしく人差し指を口の前に持っていきながら「デートしよう」と誘ってきた荼毘に、なまえが首を傾げてしまったのは致し方無いだろう。脳内でデートの意味を調べ始めてしまったくらいだ。
「いやです……」
「まあそう言うよな」
断ろう、というか、周りに人が多いためここでは危険だと逃げようとしたのだが、あろうことか周りの人々を人質にしてきたのだ。ここで炎をぶっ放されたくなければ自分に付き合えと。やることが敵そのものである。敵なのだけれど。
「お前も飲めよ。俺だけ飲んでても仕方ねえし」
「……人生初タピオカが荼毘とだなんて」
「そういえば、タピオカってなんかの卵なのか? つーことは俺ら今大量の卵飲んでんのか……」
「タピオカの原料はイモだよ……!」
「へえ。知らなくてもいい情報どうも」
感謝の欠片もないお礼をされむっと頬を膨らませる。人にタピオカミルクティーを(脅して)買わせておいて、言うことがいちいち最悪だ。タピオカミルクティーに罪はないので全部飲むが。
「遊園地とか水族館はばれる可能性高いし、そもそも楽しくないだろうし。別に行かなくていいか」
「私だって行きたくない……!」
「なんだよさっきから文句ばっかりだな」
「逆になんで文句言わないと思ったの……?」
思わず素で呟いた言葉が荼毘に届くことはなかった。あそこに行こう、ここに行こうと連れ出す荼毘に腕を引かれなまえも途中から口を挟み始める。そこじゃなくてあっちがいい、とか。そこのおすすめはあれだよ、とか。
「あの、さすがにもう聞いていい?」
「ん」
「どうして、で、デート、を」
「したいって思ったから」
当然とでも言いたげに口角を上げる荼毘の目が細まる。結局わからなかった、と眉をひそめなまえはこっそりため息をついた。
「まだ続けるなら、私行きたいところあるの」
「お前も楽しんでんじゃねえか」
「お金は全部私が出してるんだからいいでしょ」
「しかも強気かよ。悪くはねえけど」
相変わらず意味がわからないけれど、しばらくはこの意味不明なデートを楽しんでやろうじゃないか。彼の機嫌を損ねて周囲の人々に迷惑をかけられてはたまらない。結局デートは夕方まで続き、荼毘は特に何もせずじゃあなと手を振って去っていった。
いや、本当に何をしにきたんだ? なまえの中で今日の出来事は一生残る疑問となった。
いくつになっても夢見がち
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