*爆豪が生まれつき女(でも一人称は俺)
*百合



爆豪が突然なまえの部屋に赴くのは今に始まったことではなかった。急にやって来てもなまえは仕方ないなあと笑って許すし、自分の部屋で暇を持て余すよりなまえといたほうがずっと気分がいい。今日もいつものように「おいなまえ」と声をかけながら戸を開ける。開けた、のだが。


「っわあああ!? かっ、かっちゃん! だからノックくらいしてっていつも言ってるよね!?」
「うるせえ!」


とりあえず叫ぶなまえに怒号を飛ばし部屋に入ってから戸を閉めた。あわあわと慌て、ベッドの上に座っているなまえに近づく。麗日のように黒のタンクトップを着ているなまえは爆豪がドアを開けるまで自分の胸に手を当てしかめ面をしていた。


「貧相な胸がどうしたって?」
「ぐぅうう」


なまえはおかしな声を出しながら上半身をベッドに委ね頭を抱えた。隣に腰かけた爆豪は涙目で睨むなまえにハッと鼻で笑う。痛くも痒くもない。


「かっちゃんはいいよ……お、大きいし……それに比べて……」
「あ? 何が羨ましいんだよこんなもん。まあなまえと耳女はいい勝負だよなぁ?」
「私と耳郎さんに謝って!?」


どうやら相当悩んでいるらしく落ち込みようが尋常ではない。効果音をつけるならどよーんだろうか。


「なまえのことだ。どうせまたバカ共になんか言われたんだろ」
「上鳴くんには何も……峰田くんに、その……胸の話を」
「(バカ共で通じんのかよ)」


とりあえず明日峰田は潰す。戦闘において大きな胸は正直邪魔になるだけだと言うのになまえは些細なことで肩を落としている。些細なことだと言えば気にしているなまえが今度は怒り出すのはわかっているので何も言わないが。


「別に励ますわけじゃねえけど気にする必要なんかねーよ」
「え?」
「俺が胸の大小でなまえと付き合ってると思ってんのか」
「っお、思ってない……!」
「じゃあ気にすんなよ面倒くせえ」
「………」


憧れもあっただろうが、爆豪の好みではなかったらどうしようという思いも少なからずあったはずだ。実際頷く顔はほっとしている。だが言わせてもらえば、爆豪は巨乳好きでもなければ貧乳好きでもない。自分が男として生まれたのならばわからないが性別が変わったとて興味はないだろう。ため息をつき未だ起き上がろうとしないなまえに顔を近づけちゅっとキスをする。あっという間に真っ赤になった顔に自然と口角が上がった。


「なまえは……俺のことだけ考えてればいいんだよ」
「……っ、はい……」


この日以来なまえが自分の胸を気にすることはなくなった。――峰田に関してはお察しである。



夜はお静かに



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