*轟成代主と爆豪の息子目線



僕の父さんは厳しくて、何よりうるさい。


「だからなんでこんな簡単な問題で躓いてんだ!」
「……うぜぇ」
「聞こえてんぞこら」
「ごめんなさーい」


今日返されたテストの結果を見た父さんが解答用紙を見ながら机を叩く。怒ってるけど先生曰く僕は五年生のクラスの中じゃ頭は一番いいらしいし、そりゃ人間だからミスだってする。ため息をつきたいのを堪えていると、父さんの大声を聞いて駆けつけたのかお母さんがリビングの戸からひょこりと顔を出した。


「お母さん!」
「っ、と……どうかしたの」


父さんから離れてリビングへ入ってきたお母さんに抱きつく。お母さんは僕を受け止めると、父さんと同じ薄い金髪を優しく撫でてくれた。父さんが鞭ならお母さんは飴だ。父さんに怒鳴られたらお母さんに抱きつきにいく流れはずっと続いている。そんな甘えたな僕も微笑しながら許してくれるお母さんが大好きだ。


「これ。テストミスしちゃって」
「? ……ミスって言っても二問だけはすごいよ。復習したの?」
「したよ」
「うん。偉い。じゃあ次頑張ろう」
「なまえはこいつに甘ぇんだよ」
「そうかな……勝己はもっと褒めてあげたらいいと思う」
「褒めてばっかじゃ意味ねえだろうが!」
「大丈夫だよお母さん。褒める父さん別に見たくないから」


お母さんにぼそりと囁いたつもりが地獄耳の父さんには聞こえていたらしく、優しく撫でられていた頭をガッと掴まれた。痛ぇ! と叫んだ僕にお母さんが綺麗に笑う。父さんに文句を言おうとしたけれどお母さんの笑顔が見れたため少しだけ我慢することにした。三秒も持たなかったが。







お母さんと父さんはヒーローだ。帰ってくる時間は遅いし休みもあまりない。しかしその分夜や休みが取れたときは目一杯僕との時間に費やしてくれるから寂しいと思ったことはあまりなかった。今日はお母さんが仕事で父さんは呼び出しがない限り休みらしい。父さんはせっかくの休みだというのに私服で出かける気満々だ。いってらっしゃいと言えばお前も来るんだよと首根っこを掴まれて車に乗せられた。意味がわからない。


「何父さん……一緒に出かけるならそう言ってよ」
「出かけんぞ」
「遅えわ」


慣れた手つきで車を出発させる。どこに行くのか問うと途端に父さんは黙ってしまった。僕がねえと続きを催促すると、ちっと大きな舌打ちをする。


「……なまえの誕生日近ぇだろうが。お前もお母さんのプレゼント選びしろ」
「……うん」
「ンだよその間は!!」
「なんでもなーい。お母さん何買ったら喜んでくれるかな」


父さんは僕にとても厳しくてうるさい。それでも愛情が感じられるように、お母さんのことも愛しているのだ。ご飯に蕎麦は出すだろうから、蕎麦以外でプレゼント考えなくちゃ。父さんは何を渡すんだろうとふと思ったとある休日の出来事であった。厳しくてうるさい、けれど優しい父さん。僕は二人の息子に生まれて来れたことを誇りに思っている。



ふわふわの不透明



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