「はよーなまえ!」
「おはよう。切島」


期待するように右手を上げる切島にしばらく考え込み、なまえが黙って右手を同じように上げれば切島は嬉しそうにハイタッチをする。どうやら自分の行動は正解だったようでなまえは少し笑みをもらした。


「ハイタッチ好きだね」
「え。俺そんなにハイタッチせがんでたか?」
「今日で十回は超えた」
「まじかよ!?」


ぎょっとする切島に吹き出すまではいかなかったがクスクス笑うなまえ。「なまえは笑顔が増えたよな」と切島が言えば「切島が面白いからだよ」となまえは返す。

いつからか切島はなまえによく話しかけるようになった。それだけではなく触れる回数も増えたように思える。触れると言っても、先ほどのようなハイタッチや肩を叩くなどの友達の延長線上にあるものだけだ。だからなまえは切島を自分と仲良くしてくれる優しい友人だと思っているが、どうやら彼は違うらしい。


「ねーヤオモモ」
「どうかしましたか、耳郎さん」
「切島なまえのこと好きじゃん? あれで付き合ってないらしいよ」
「……好き……そうだったんですの?」


実は切島がなまえのことを好きだというのは八百万以外全員が知っていたのだが割愛しよう。コソコソと耳打ちした耳郎の隣で蛙吹と麗日も二人の話す姿を横目に口を開いた。


「好きだからまずは自分を好きになってもらおうっていうところとても素敵だわ」
「なんか見てるこっちがドキドキするよね……あともどかしい……」
「なまえちゃんなかなか相手の好意に気づかないものね。でもいきなり好きだと言って困らせないようにって考える切島ちゃんの気持ちも尊重したいわ」
「うん……あーがんばれ切島くんっ……!」


教室の隅での会話だったために二人には聞こえていないようで未だに話は続いている。耳をすませば切島がついに一歩を踏み出していた。


「なあなまえ、今度の休みどっか遊び行こうぜ。予定とかあるか?」
「遊び……」


デートのお誘いだっ!! と緑谷は関係がないのに顔を赤くして二人を見た。というか、やはりクラスメイト全員が二人を見守っていた。なまえは驚いた顔をしたがすぐに首を左右に振る。予定がないという意味であり、遊びに行けるよという返事でもあった。


「っしゃー! じゃあ詳しいことはまたあとでな!」
「……そんなに嬉しいもの?」
「おう!」
「……そう」


そこでチャイムが鳴りなまえたち全員が席に戻る。頬杖をついてつまらなそうにしながら爆豪は思った。くっつくのも時間の問題だな、と。なまえが座ってもしばらく口角を上げ喜びを隠せていなかったのを八百万はしっかりと見ていた。


「なまえさん。よかったですわね」
「?」
「……ふふふ」



あいをまぜていたいのだろう



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