「神様なんてもんがいたなら、俺たち二人して即あの世行き決定だな」
「なんか急に空想じみたこと言い出してびっくりしてるんだけどー?」


絡まれた指だけでお互いの関係性など言うまでもないだろう。荼毘が突然自嘲じみた笑いのまま変なことを言い出したので、とうとう頭がイかれてしまったかと心配になった。


「とうの昔にイかれてるよ。残念だったな」
「それは残念。イかれてる奴と一緒にいる私も相当頭ぶっ飛んでるから安心して」
「頭どころか、実際翼で飛べるだろ」
「まあね」


高層ビルの屋上で二人佇みながら夜景を眺める。なまえはため息をつきながら風で揺れる髪を片手で撫でつけた。


「私たちはきっと死んだら地獄にしか行けないよ」
「……なまえとなら悪くないな」
「あはは。殺し文句。いいね、今のはきゅんと来た」
「女ってのはよくわからん殺し文句でときめく生き物なのか。めんどくせぇ」
「でも、本当に。私も荼毘となら、地獄でも悪くないって思う」


次の瞬間には自分の体が荼毘に包まれていて、思わずはにかんでしまう。なんで敵を好きになったんだろうね、なんて昔の自分に問いかけたところで、答えは返ってこない。自分だってまさか敵と交際するだなんて想像もしていなかったのだ。むしろ今でも信じられないくらいである。


「地獄でなら俺らの関係意外と認められるかもな。いろんな奴らいそうだし」
「かもねぇ。ここじゃ一生認められないし、地獄ならスルーしてくれそう」
「ヒーローと敵……しかも俺の相手は現No.2と来たもんだ。注目の的に違いねえ」
「荼毘は好きな人見せつけたいタイプ?」
「――いや?」


ゆっくりと離れた荼毘は絡めた指を前へと突き出す。その勢いのまま一歩踏み出せば、二人の体は地面へと真っ逆さまに落ちていく。


「俺は愛してる女を誰の目に入れることもせず、死ぬまで大切に愛でるタイプだよ」
「……ん。知ってるよ、荼毘のことだもの」


今度はなまえが荼毘を抱きしめ、剛翼を使い笑いながら夜の街を飛ぶ。月に照らされて二人飛ぶ姿を第三者として見たかったけれど、好きな人と眺める夜景のきれいさにどうでもよくなった。


「さいっこうの夜だねー、荼毘っ」
「お前とならいつでも最高だよ、なまえ」
「っはは! かっこよか」
「知ってる」


さながら愛の逃避行だと謳えば荼毘も口角を上げる。

全く、なんて最高の夜だ。



瞼を削るエバーグリーン



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