「お前は私のなんなんだよ」
「……質問の意図が見えないな」


とある一室でくつろいでいたところ、なまえから放たれた言葉にベストジーニストは首を傾げることとなる。むすっとした表情で見つめているなまえに手招きすれば、ゆっくりと近づき隣へ腰かけた。


「関係性を聞いているのであれば、恋人というのが正しいと思うが」


恋人と発言したところでぴくりと反応したのを見逃さなかった。ベストジーニストが服に隠された口元に笑みを浮かべ、優しくなまえの背を撫でる。


「すまない。何か君を怒らせるようなことを私はしてしまったのだね」
「大人の余裕うぜえ……」
「そんなつもりはないが」
「……余裕、ありすぎて……ほんとうざい」


全体重をかけて甘えてくるだなんて珍しい。何も言わず撫でることに集中していればぽつりとなまえが問う。


「恋人なら、なんでガキ扱いすんの」
「……なまえ」
「なに」
「君は愛らしいな」
「……私ふざけてないんだけど」
「私もふざけてなどいないさ」


聞けば、なまえはベストジーニストにされていること全てがまるで子ども扱いだと言いたいらしい。今こうして背を撫でるのも、キレたときに諭しながら抱きしめるのも、自分がやる事なす事全部笑顔で流してしまうのも。


「安心したまえ。そして覚えておくといいよ、なまえ」
「? なにを……」
「それら全て子ども扱いではなく……女性として君を見ている、恋人扱いだということを」


恋人だからくっつきあいたいし、何をしていても微笑ましいと思う。恋人同士となってから、ベストジーニストは一度だってなまえを子どもとして接したことなんてない。


「わかってくれたかな」
「………」
「しおらしいなまえもかわいらしい。また新しい君を見つけられて私は嬉しいよ」
「っ、もう黙って」


少しずついつもの調子に戻ってきたなまえに撫でる手を止める。しかし頬を赤く染めたなまえが「なんで止めるの」などと普段なら絶対言わないことを言うものだから、ベストジーニストは思わず口づけてしまった。突然のことに驚いているが、これはなまえが悪いのであって文句は言われる筋合いはない。


「君が愛らしいのが悪い」


なまえに向けて告げた言葉は、どこまでも優しい声色だった。



邪魔をしない程度の心



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