授業も全て終わりあとは帰るのみとなった。なまえが部屋に帰ったらすることを考えながら荷物を鞄に詰めていると、なあなまえと自分を呼ぶ声がした。


「……切島」
「なまえ、俺今から体育館γで特訓すんだけどさ、よかったら一緒にやろうぜ!」


声をかけたのは切島で、体育館の使用許可は取ってある! と親指を立てられる。なまえは一人じゃできなかった技の練習に付き合わせるか、と頷いた。近くで会話を聞いていた耳郎と上鳴も共に特訓を行うことになり、なまえが席を立ち上がると誰かに手を取られた。突然のことになまえが肩を震わせ振り向く。


「っ、轟! いきなり触ってこないで!」
「……俺も行く」
「は……? 特訓の話? 勝手に来ればいいでしょ」
「ああ」


返事をしたというのに中々手を離そうとしない轟になまえは何……と困惑する。


「離したくねえ」
「いや離そうぜ!?」


切島が轟の手をチョップして無理やり離させるとほら早く行こう! となまえの背中を押す。轟はなまえと触れていた手を見つめぎゅっと握りしめる。そして遅れてなまえたちの後ろをついていった。

ヒーローコスチュームに着替え体育館γへと集まった五人。耳郎と上鳴はそれぞれすぐ技の確認などを試し始めたが、なまえたち三人は特訓ができずにいた。


「轟ヒーロー基礎学のときペアだったろ? 今くらい頼む!」
「ペアだと戦うことはできねえだろ」
「本音は」
「なまえと一緒にやりてえ」
「俺と同じ意見なんだよなぁ……!」


くっと悔しそうに俯いて切島は大きくため息をついた。轟は決して意見を変えようとしない。なまえはため息を繰り返したあとで呟いた。


「さっさとやりたいんだけど」
「俺たちもそうしたいのは山々なんだけどさ……」
「なまえは俺と切島どっちがいい」
「新技試させてくれるほう」
「決まらねえ……!」


そんなのなまえが試させろと一言言えばどちらもやる。中々始めようとしない三人に耳郎がねえと近づいた。


「あんたらもう三人でやれば?」
「耳女……」
「耳郎響香。なまえもさ、三人でやろうって言いなよ。多分こいつら首縦にしか振らないから」
「私に指図しないでよ」
「はいはい。三人でやろうって言ってみたらどう?」


提案として言い換えた耳郎になまえは少し考えて三人でやればいいでしょと口にした。切島がんーと頭を掻いていると轟は悪びれる様子もなく言う。


「さすがになまえも俺と切島二人同時に相手すんのはキツいだろ」
「……あ?」


なまえの口元がひきつり耳郎はあちゃーと苦笑する。イラついているオーラを隠すことなくなまえは小さな爆破を起こすと怒鳴り散らした。


「まとめてかかってこいや! 余裕に決まってんだろ!」
「キレた!? えっでもなまえ」
「……切島相手譲ってくれ。二人相手は」
「あーめんどくせえ! 轟と切島二人とやり合いたいつってんだよ!」


なまえは特に何も考えずに発言したに違いないが、二人の意見がころっと変わるには十分すぎるものだった。お互いどちらかがなまえと戦いたいと考えていたのが嘘のように二人が同時に"個性"を発動する。ニヤリと笑ったなまえに耳郎は笑いながら腰に手を当てしばらく三人の様子を眺めていた。


「二人ともなまえ大好きすぎてやばいわ」
「うェーい」
「ぶふ……っアホになってる……!」



嘘もつけないろくでなし



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