なまえが爆豪と付き合っていると公言したとき、最終的に応援される場合でも「大丈夫なの?」と必ず一言もらう。男女問わず大声で威嚇し、自尊心が高くとても攻撃的な性格。そんな爆豪に脅される形で付き合っていると思われるのが常であり、なまえはきちんと彼を好きなのだと伝えても信じてくれない者のほうが多い。付き合っていると聞いても、皆なまえが怒鳴られ二人が隣にいるところもあまり見たことがないのだ。信じろというのが無理な話である。


「かっちゃん、見づらくないの? 退くよ……?」
「動くな」
「あ、ごめんね」


爆豪の部屋にて。なまえは今よくボロカス言われている爆豪のあぐらの上に座り、後ろから抱きしめられている状態で彼の読むヒーロー雑誌を一緒に見ていた。大人しくしてはいるが落ちつかないのが素直な気持ちである。肩に顎を乗せられているせいか首に息はかかるし、爆豪がページをめくるときに腕が腰に当たり少しくすぐったい。何より密着している事実が恥ずかしくて堪らない。おそらく爆豪はなまえが恥ずかしがっているのをわかってやっている。それでも心から離れたくはなくて、なまえは遠回しにしか爆豪の上から退くことを言わない。頭の良い爆豪のことだ、きっとそんな思いも察しているのだろう。


「ねえ、かっちゃんかっちゃん」
「あ?」
「……えっとね、あの……」


もごもごと口を動かすが言葉にはならない。いつもなら夢中になるヒーロー雑誌もちっとも頭に入らず顔を伏せる。爆豪はパタンと雑誌を閉じると床に落とし、なまえの腕を引っ張るとベッドへ寝転がった。沈み込む衝撃に目を瞑り、ゆっくりと開けると至近距離に爆豪がいる。そのまま見つめ合い、どちらからともなく唇が触れ合った。自分の言いたかったことを理解し、頭の後ろに手が添えられ逃がさないとでも言いたげな強引さに胸が高鳴る。舌を絡める深いキスまですればあっという間に酸欠で苦しくなった。


「ん、っぁ、かっちゃ……」
「っなまえ……」


酸素を取り入れるために唇を離してもまたすぐにくっつける。何度かそんなことを繰り返しお互いが満足するまで続いた。


「……なまえ、もっとこっち来い」
「うん……」


苦しいくらい強く抱きしめられてなまえは笑みがこぼれる。こんな爆豪を皆に見られたら卒倒するはずなのは目に見えていた。

そう、なまえは爆豪が好きだ。もちろん爆豪もなまえが好きである。たしかに普段は恋人とは思えない横暴な態度を見せてくるけれど二人きりになったら彼はとことん甘えさせてくれる。くっついて離れずずっとそばに居てくれる。なまえはそれだけで十分だった。お互いがお互いを想いあい、自分だけがこんな爆豪を知っているのならば、それだけで。


「? 何笑ってんだ」
「何でもないよ、かっちゃん」


ふふっと声を出してしまったせいで笑っているのがバレてしまったが、それ以上は追及してこなかった。大好きだよと小声で伝えれば、ああ俺もと同じく小声で返ってくる。ひたすら甘い爆豪を堪能すべく、なまえは彼にすり寄るのだった。



かがやける日々の正体



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